どこの職場でも人間関係の悩みは尽きることはないでしょう。その中でも保育園の人間関係はとても複雑に絡み合っており、「保育士同士」「園長」「保護者」と三方面に対して良好な人間関係を築いていかなければなりません。さらに女性が多い職場であるため、女性特有のドロドロした人間関係が、良好な人間関係を築くことを困難にしており、場合によっては退職にまで追い詰められてしまう保育士さんもいるほどです。
それでは、どのようにして保育士は職場の人間関係と向き合っていけば良いのでしょうか。
今回は保育の各現場における人間関係の対処方法や人間関係のストレスを軽減する方法など、人間関係にお悩みの保育士さんに向けて役に立つ情報となっています。
また、記事の後半に就職や転職をする際に、人間関係で悩まないための必ずチェックしておきたいポイントをご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
保育士の職場は慌ただしい日々の業務に追われて休む間もない時であっても、子どもたちの前では疲れた表情などを見せず、常に明るく保育を行わなければなりません。そのような環境下で自分の担当する仕事だけでも精一杯で余裕のない状態となるのでストレスを感じやすくなります。仕方がないとわかりながらも、新人指導やミスの多い保育士に対して疎ましく感じる傾向が強く、人間関係において良好な関係を築くことが困難になっています。
また、近年増加傾向にある男性保育士もまだまだ少ないのが現状で、女性が圧倒的に多い職場です。男性に比べて女性は感情の起伏が激しく、そのときの気分で発言したり、考えた方もコロコロ変わるなど、他人に「依存」しやすい傾向があるといわれています。なので、派閥やグループを作りやすく、その輪の中で「自分の存在を認められたい」「居場所がほしい」といった”承認欲求”を感じやすいのです。
そのため、先輩、同僚、上司との人間関係にはとても気を遣い、ひとたび輪を乱してしまうと修復が困難であり、場合によってはいじめやトラブルにまで発展してしまうこともあります。
上記のように、人間関係を良好に保てないまま、修復も困難になってしまうと、業務に支障が出てしまうほど心や身体に負担を抱えるケースも出てきます。その結果、ストレスに耐えきれなくなり、退職をせざるを得ない状況へと悪化していくのです。下図のグラフをご覧ください。
※東京都福祉保健局「平成26年3月 東京都保育士実態調査報告書」より
この調査結果からも見て分かるとおり、保育士の退職理由として“人間関係”は“妊娠出産”“給料の少なさ”に続いて多い結果となっています。これだけ多くの保育士が人間関係で悩み、退職にまで至ってしまっています。保育士は具体的にどのような人間関係の悩みを抱えているのでしょうか。
保育士の職場における人間関係について、保育士を取り巻く3つの人間関係の実態をご紹介します。
近年の保育現場は保育の長時間化に伴い、勤務体系も複雑になってきています。だからこそ保育士同士の連携を深めていかなければ、保育が成り立たないのですが、保育士同士の人間関係は閉鎖的な空間から歪みがやすくなっているのが現状です。行政が平成29年4月に新しい役職として「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」を設置されましたが、実際、多くの保育園は園長・副園長・主任以外の役職がなく、それ以外の保育士の立場は横並びとなっています。この横並びの状態によって、年齢や経験年数などさまざまな理由によって上下関係が生まれやすく、水面下で嫉妬ややっかみが多くなり人間関係がこじれてしまう原因となっています。
さらに女性の職場ということもあり、集団行動が苦手な人やマイペースな人、その場の空気を読むのが苦手な人は特にお局さんなどの目にとまりやすいでしょう。性格の優しい人は運悪く派閥争いに巻き込まれることも。酷い職場では陰湿ないじめや悪質な嫌がらせに発展することも多くあります。
たとえば先輩保育士と新人保育士との間で起こりやすいのが、「何で分からないのか」と先輩保育士から強く当たられてしまったり、受け身の新人保育士にどう接して良いのか分からず雰囲気が重くなってしまったりと人間関係の悩みのタネになっています。
保育園でのトップである園長先生との関係も保育士にとっては非常に重要です。園長先生は基本的にはあまり現場に立つことがないため、実際の保育現場を目の当たりにする機会が少なく、現場に合っていない無理のあるカリキュラムを保育士の声を聞かずに押し付けてしまうケースもあります。
そして行き過ぎた言動は、パワハラとして人間関係に亀裂が入ることもあります。また、家族経営の保育園では保育経験がない方が園長先生に着任したり、園児や保育士よりも利益を重視するところもあります。そのため、子どものために働いている保育士との確執を生んでしまうかたちとなります。
保育士として働く上で、断つことができないのが保護者との人間関係です。少なからず対応が難しいと感じる保護者との関わりは、ものすごく心理的な脅威となります。「大切な我が子を預けているからこそ我が子を思うあまりに無理難題な要求をする保護者」や「育児に関心が薄く保育の理解を求められない保護者」「保育をサービス業と認識して普通では考えられない理不尽な要求や子育てをすべて押し付ける保護者」「子どもよりも仕事を優先せざるを得ない保護者」との人間関係に悩まされています。保育士の考えと保護者の考えがいつも一致するとは限りませんからね。そうした時に保育士は保護者に対してストレスを感じたり、自分の保育に自信を失ったりしてしまいそのまま関係を悪化させてしまうことがあります。
また、いわゆるモンスターペアレントとなった保護者との人間関係も非常にストレスとなっています。小さいトラブルならまだしも、役所にまで訴えられるような大きなトラブルに発展するようなケースは保育士を辞めようとまで悩んでしまう人もいるほどです。
それでは、肝心な保育士においてのそれぞれの人間関係の対処法をご紹介します。参考にしていただいて少しでも保育士の皆さまが働きやすい関係を築いていただければと思います。
保育士同士の人間関係には、まずは、年上でも年下でも年齢に関係なく相手に敬意を払いましょう。その上で、謙虚な姿勢や挨拶を心掛けて、共通点を見つけるなどコミュニケーションを図っていきましょう。また、派閥やグループには無理に入らずに、下手に肩入れや同調をせず、“我関せず”割り切って仕事を全うすることが大事です。時には、聞き流すということも人間関係を築くには効果的となりますので、うまく自分の立ち位置を把握しましょう。また、人間関係は“信頼”の上で成り立つ関係です。仕事においては、”保育士”として認めてもらうことが信頼を得ることに繋がります。頑張り次第では、頼れる存在として評価され、人間関係が良好になることがあります。
くわえて、イジメなどはないものの、どうにも職場に馴染めなかったり、仕事の連携がうまくいっていないと感じた際には他の保育士さんとの得意・不得意を認識し合い、全体でその認識を共有することをオススメします。誰の何のフォローすれば良いかが分かるのでお互いが行動しやすくなります。
そして、保育士同士の人間関係には当事者同士の考え方のズレも多く、互いに相手の考えを誤解して受け止めてることにより不和を起こしています。不和解消にはとにかく話し合う時間をもつことが大切です。勤務時間内は難しいと思うので、保育時間外・休憩時間・通勤途中・外での食事などインフォーマルな場所を活用してみてください。思わぬにところで関係性が深まることがあります。
じつは自治体の調査により、園長先生の意見が強く通ってしまい、会議の意味がなく会議が報告会のようになってしまう保育園は“いじめが多い”ともされています。それほどまでに園長先生との人間関係は、職場の共感や一体感に影響でるくらいに重要です。対処法としては、園長先生の話を敬意をはらいながら深く傾聴してみましょう。質問や確認もせずに言われるままになっていませんか?角が立ってしまわぬように、納得できる内容まで園長先生の思いを聞いてみましょう、こちらからの歩み寄りも大切です。もちろん、全てが納得できない場合や理不尽が極まわることもあるしょう。その場合は、残念ながら園長先生が変わらない限り改善する見込みはありません。自分の将来や理想の保育士像と現状を天秤にかけ、覚悟を決め転職を検討しましょう。理想とする保育方針を行っている保育園は必ずありますよ。
保護者との人間関係には、日々のコミュニケーションと信頼関係の構築が最も重要です。笑顔で元気よく目を見て挨拶をするだけでも信頼が増すもの。保護者の気持ちになって考え寄り添うことで築きあげることできます。しかし、どうしてもクレームというものは出てきてしまうものです。その時には、保護者の言葉を決して遮ることなく、最後まで話に耳を傾けてください。そしてなるべく一人で抱えまずに、職員全員で話し合い、早めの対応を心がけましょう。そして、とにかく心配している保護者には、意識的に園での様子や子どもの育ちを伝えると良いでしょう。しっかりと子どものことを見ていることを理解してもらうことが重要です。また、保育士は何でも屋のサービス業ではありません。保護者の要望をすべて聞き入れる必要はなく、できる範囲で対応の中で、“子どものことを第一”とした保育を心がけましょう。できない事ならば、理解をしていただくまで粘り強く話し合いをすることが大切です。
そもそも“保護者から見える子どもの姿”と“保育士から見る子どもの姿”とは必ずしも一致するとは限りません。まずは他の保育士にも相談し、複数の保育士で子どもを見ることによって、適切に子どもを理解することできます。トラブル防止には、クラス(園)だよりを活用するのも良いでしょう。年齢に応じた発達の特徴などを伝えておき、保護者全体に周知できるような試みを行うことによって、保育士から見た子どもの姿の理解を求められます。
いくら対処を試みても自分一人だけ改善を図るには限界があります。最悪の場合、どんどん人間関係が悪化してしまうこともあるでしょう。そんな時は、仕事ができなくなるほどにボロボロになってしまう前に、“転職”という選択肢を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
転職は、慣れ親しんだ保育園を離れることや、再び新しく人間関係を構築していかなければならないこと等のデメリットもあります。しかし求人の見つけ方次第では、人間関係が良好なだけではなく給料も福利厚生も待遇が良い職場にも出会える可能性も大いにあります。
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これらは当該の保育園が、良い人間関係が作られているかどうかの判断材料になるポイントとなります。ぜひ転職活動時の見学の際にチェックして、あなたにピッタリの職場を見つけてください。
また、円満な退職方法など退職について紹介した下記の記事も合わせてお読みいただけたらと思います。
前提として人間関係からくる“ストレス”を溜めないようにすることも大切です。そこでストレスを軽減する方法を3つご紹介していきますので、参考にしていただければと思います。
ストレスを軽減するには“相談”することが何よりも大切です。
職場内・外に愚痴や悩みを言える信頼ができる相手を作り、相談をしましょう。このご時世どう噂を立てられるかも分かりませんので、ここでは“信頼ができる相手”というのが非常に重要となります。相談することによって、客観的な意見を聞くこともでき、悩みを打ち明けて共有してもらうだけでも、気持ちがだいぶ楽になります。また、専門的なカウンセリング機関に相談することも良いでしょう。心理カウンセラーから適切なアドバイスをもらうことができます。
あくまでもプライベートでなく“職場”の人間関係なので、仕事は仕事だと割り切ってしまうのも良いでしょう。他人のプライートに立ち入らずに深入りすることを避けることもストレスを軽減できます。ドライなのではと思いますが、適度な距離感を保つことも働き方としてはとても大切となってくるのです。慣れ合うよりも自分のために時間を使うことが有意義と考える保育士も多いようです。
自分の時間を自分の好きなことに費やし、楽しむことがストレス軽減に繋がります。オフの時にどれだけリラックスして過ごせるかが大切です。仕事とは異なる関わりの人と接する時間を意識して、美味しいものを食べたり、ショッピングをして自分へのご褒美を購入したり、ジムで身体を動かしたり、お風呂に浸かってリラックスをしたり…”好きなことをするための仕事”という位置づけにするのも大切です。