「もう辞めたいかも…」と感じながら、毎日がんばっている保育士さんは意外と多いんです。厚生労働省の調査によると、保育士のうち約10人に1人が、毎年のように職場を離れているというデータもあります。
この記事では、「保育士を辞めたい」と思う理由やその背景をやさしくひもときながら、辞めたあとの不安や転職の選択肢についてもご紹介します。
実際に転職した保育士さんの声も交えてお伝えしますので、「自分だけじゃないんだ」と感じてもらえたら嬉しいです。
「もう辞めたいな…」と思う気持ちが湧くことは、決して悪いことではありません。人間関係や体力面など、さまざまな理由で悩むことは自然なことです。
でも、退職を決める前に少しだけ立ち止まって、自分に問いかけてみてください。
• 一時的な感情ではありませんか?
• 園の中で変えられることはないですか?
• 後悔しない決断だと思えますか?
これらを考えることで、気持ちが少し整理できるかもしれません。
悩みを一人で抱えていると、考えが偏ってしまうこともあります。信頼できる家族や友人、保育士仲間に相談してみましょう。話すことで、新しい視点が見えてくることもありますよ。
辞めたあとの生活についても、しっかり考えておきましょう。収入が一時的になくなることもあるので、次の職場探しは計画的に進めることが大切です。
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最初に、保育士が「辞めたい」と感じる、代表的な4つの理由とその背景についてお伝えします。
保育士の仕事は、長時間労働や持ち帰り仕事が当たり前になってしまっている職場も多く、そうした過酷な労働環境に悩む方は少なくありません。
現場では、子どもたちの保育に加えて、指導計画の作成、行事の準備、保護者対応など、業務の幅がとても広いのが特徴です。そのため、どうしても勤務時間内に仕事を終えられず、自宅で作業をすることも増えてしまいます。
全国保育協議会の調査によると、全国の約6割の保育士が「長時間労働の傾向がある」と答えています。
さらに、慢性的な人手不足も深刻です。一人ひとりの仕事量が多く、誰かが休むと他のスタッフにしわ寄せがいくため、「迷惑をかけたくない」と休むことをためらってしまう保育士もいます。
このように、長時間労働や持ち帰り仕事、人手不足による過重な負担が重なって、保育士の働く環境を厳しくしています。
「子どもは好きだけど、このままでは身体がもたない…」と感じ、辞める決断をする方がいるのも無理はないのです。
保育士の仕事内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
・「保育士の仕事内容は?幼稚園教諭との違いから、簡単にわかりやすく解説」
保育士の退職理由としてとても多いのが、人間関係の悩みです。
東京都の「平成30年度 保育士実態調査結果」でも、離職の理由として最も多かったのが「職場の人間関係」でした。
保育現場では、園長先生との保育方針の違いや、同僚との派閥トラブルなどが発生することもあります。立場上、自分の意見を言いにくく、コミュニケーションがうまくいかないことでストレスを感じ、「もう続けられない…」と感じることも。
また、保育園は女性が多く、長時間同じメンバーで働くことが多い、やや閉鎖的な職場です。そうした中で、新人が派閥に入れなかったり、「仕事ができない」と見なされて陰口や悪口を言われるケースもあるようです。人間関係が一度こじれてしまうと、関係を修復するのが難しいという声もよく聞かれます。
さらに、保護者との関係に悩む保育士も多くいます。理不尽なクレームや過度な要求が続くと、心身ともに疲れてしまいますよね。中には、保育のやり方を否定され、「自分には向いていないのかも…」と感じて辞めることを考える方もいます。
保育士として働く中で、「責任のわりにお給料が低い」と感じ、辞めたくなる方も多くいます。
厚生労働省の調査によると、保育士の平均年収は約388万円。一方、国税庁の調査では日本全体の平均年収は約460万円となっており、保育士の年収は平均よりも約70万円ほど低くなっているんですね。
さらに、保育士の給与体系は年功序列が基本ですが、昇給額が小さいため、大きな収入アップが見込みにくいという声もよく聞かれます。
たとえば、10年以上勤務していても、昇給は年に数千円程度というケースも少なくありません。ベテラン保育士でも年収は450万円前後にとどまり、主任や園長などの役職に就かなければ、給与が大きく上がることは期待しにくいのが現状です。
こうした給与や待遇への不満から、「今後の生活や将来を考えると、このままでいいのかな…」と悩み、転職を検討する保育士も増えているんです。
保育士の給料については、こちらの記事で詳しく解説しています。
・「保育士の平均年収はどれくらい? 雇用形態、勤続年数などによる違い」
保育士として働き続ける中で、「この先どうなっていくんだろう…」と将来に不安を感じ、辞めたくなる方もいます。
保育士のキャリアパスは、基本的に「現場で子どもたちと関わり続ける」か「主任や園長などの管理職を目指すか」の2択に近いもの。ですが、管理職になると子どもと直接関わる機会が減ってしまうため、「今の仕事にやりがいはあるけれど、昇進はちょっと…」と感じる人も少なくありません。
逆に、「自分に管理職は向いていないかも」「昇進のチャンスがないかも」と悩みながら働いている方もいます。
また、現場で長く働き続けることにも迷いが出てきます。子どもとの関わりは大好きだけど、体力的には年々負担が増えてくるもの。特に40代以上のベテラン保育士の中には、「体力的にこのまま続けていけるかな…」と将来を心配する声もよく聞かれます。
現場と管理職以外の選択肢が少ないため、将来のキャリアが見えづらくなり、「この先もずっと続けていけるのかな?」と不安になってしまう保育士もいるのです。
ここからは、実際に保育士として働いていた方たちのリアルな退職理由をご紹介します。どのエピソードも、悩みながらも頑張っていたからこそ生まれた切実な声ばかりです。
「自分だけがつらいわけじゃなかったんだ」と感じられるものがあるかもしれません。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
関東在住・保育士N.Sさん(仮)・24歳
保育士4年目となりますが、手取りで16万円です。
一人暮らしなので家賃はもちろんのこと、光熱費や食費にくわえ奨学金の支払いもあります…。正直、なんの楽しみもなく暮らしていくのがやっと。さらに、人手の足らなさに残業なんて当たり前で、休憩もお休みも取れず転職を考える時間さえない。辞めたいの一言につきてしまい、退職を決意しました。
関東地方・保育士Kさん(仮)・年齢非公開
保育士4年目となりますが、手取りで16万円です。
保育士として毎日過重労働・・・休憩なしで12時間労働して、偏頭痛持ちになり、職場の人間関係やモンペ親で胃が痛み、抱っこやおんぶ他にも重い荷物を持つのが日常的でぎっくり腰にもなった。休みたくとも、有給は計画有給にと、潰されました。あげくうつ病になり、ストレスで不眠にもなり2~3時間で目が覚め、日曜には変な動悸がしてせっかくの休みも休みじゃない。もっとゆとりがある仕事がしたいから、辞めようと思ってます。つらいです。
関東地方・保育士Fさん(仮)・26歳
子どものことは大好きなのですが、保護者との人間関係…クレーム対応に精神的にもボロボロで辞めようと思っています。
血も出ていない小さな怪我でも「うちの子傷つけた!訴えてやる!」と怒鳴られ、数時間後に役所の方から連絡が入ります。
また、一般的な体操程度の運動保育をお伝えすると虐待だ体罰だと憤慨され、立ち入り調査騒ぎを起こすことに。
もう保護者が怖くて、体調にも支障がきているほどです。ですが休むなんてことも出来ず、他の先生とも忙しくコミュニケーションも取れず、園長にも「忙しいから」と突き放されました。
保育士を辞めるとき、「退職届を出せば終わり」というわけではありません。職場には人間関係や子どもたちとのつながりがあり、気をつけたいポイントがいくつかあります。
ここでは、円満に辞めるために意識しておきたいことをまとめました。
退職するなら、できるだけ年度末の3月を目指すのが理想的です。保育園では4月から新しいクラスや担任が決まるため、その前に退職するとスムーズなんですね。
年度途中での退職は、同僚への負担が増えたり、子どもたちに不安を与えてしまったりと、さまざまな影響が出ることも。
とくに、運動会や発表会などの行事直前は避けた方がよいでしょう。担任が変わると、保護者からの信頼にも関わってきます。
<退職を決めたら、まず誰に伝えるべき?>
退職を決めたら、まずは「直属の上司」に口頭で退職の意志・退職したい理由・退職時期を伝えるのが基本です。園の規模によっては園長に直接伝えてもかまいませんが、スムーズに話が進むよう、順を追って伝えることが大切です。
中には「園長に伝えておくね」と言ったまま、返事がないまま時間が経ってしまうことも…。そんなときは、「私からも園長に直接お話したいので、〇日までに時間をいただけませんか?」と、具体的にお願いすると安心です。
<退職届けの書き方>
職場に退職を認められたら、退職届を用意します。保育園指定の退職届用紙があるかを確認し、なければ下記のようなフォーマットを参考に退職届を作成しましょう。
※日付は、提出する日付を記入してください。
※退職理由は「一身上の都合」と記します。
保育士は、子どもたちにとって安心できる存在。突然のお別れは、子どもの心を不安定にしてしまうこともあります。
とくに担任の先生との関係は深いため、別れを伝えるときは慎重に。「明日から来ないの!?」と子どもがショックを受けないよう、少しずつ気持ちを整えていけるような伝え方が大切です。
また、保護者にとっても急な退職は不安のもとになります。しっかりと気持ちを伝え、丁寧な対応を心がけましょう。
担任をしていた場合は、引き継ぎもとても大切です。業務内容だけでなく、子どもたち一人ひとりの様子や、保護者との関わりなど、きちんと後任の方に伝えるようにしましょう。
とくに以下のような内容は、口頭だけでなく書面でもまとめておくとスムーズです。
• クラスの1日の流れ(ルーティン)
• 個別の支援が必要な子の情報
• アレルギーや健康面の注意点
• 家庭環境で配慮が必要なこと
引き継ぎを丁寧に行うことで、辞めた後も安心してバトンを渡せますよ。
退職時に意外と忘れがちなのが、園から借りているものの返却です。
忙しい日々の中で、何を預かっていたのか忘れてしまうこともあるので、早めにリストアップしておくのが安心です。
たとえば、以下のようなものがあります。
• 健康保険証
• 社員証
• 制服
• 園児の記録(個人情報を含むもの)
• 業務マニュアルや備品(パソコン、文房具など)
• 通勤定期券
これらはすべて、園の管理や情報保護にも関わってくるものです。迷惑をかけないよう、退職前にしっかり確認して返却しましょう。
退職後に必要になる書類も、忘れずに確認しておきましょう。これらは転職活動や公的手続きで必要になる大切な書類です。
代表的な書類は以下のとおりです。
• 雇用保険被保険者証
• 離職票
• 年金手帳
• 源泉徴収票
• 健康保険資格喪失証明書
これらの書類は、退職後10日以内に郵送されることが多いですが、届かない場合は園に確認をしましょう。必要な書類をあらかじめリストアップしておくと安心ですよ。
保育士を辞めることを考えても、その後の進路が決まっていないと不安になりがちです。
でも、実はさまざまな転職先や選択肢があります。ここでは、保育士を辞めた後に考えられる主な転職先やその選択肢について詳しく解説します。
保育士を辞めた後も、同じ職種で働き続けたいと考える方は少なくありません。特に人間関係や職場環境に不満があって退職を考えている場合、他の園への転職が有力な選択肢となります。
園ごとに保育方針や職場の雰囲気は異なるため、自分に合った環境を見つけることができれば、保育士として新たなやりがいを感じながら再スタートを切ることができます。
たとえば、「自由な遊びを重視する園」や「規律を大切にする園」、「少人数でアットホームな雰囲気」の園など、さまざまなタイプがあります。
現在の園で悩んでいることがあっても、別の園では自分の価値観に合った職場環境に出会える可能性があるんですね。
園選びの際に重視すべきポイントは以下の通りです。
• 園の立地や通勤のしやすさ(毎日の通勤負担を減らす)
• 保育方針や教育理念(自分の保育観と合っているか)
• 職場の人間関係や雰囲気(見学や口コミで確認)
• 設備や安全対策(働きやすさや子どもの安全性)
• 勤務条件や給与、福利厚生(生活とのバランス)
• 園の規模(小規模でアットホームか、大規模で分業体制か)
ポイントは、1つだけでなく、いくつかの希望条件を組み合わせて選ぶこと。自分に合った園を見つけるために、じっくりと考えて選びましょう。また、別の園に転職する理由には収入に不満があるケースもあります。
保育士のキャリアと言えば、現場で子どもたちと直接関わるか、管理職を目指すかの2つが一般的ですが、保育士資格を活かして別の職種に転職することで、選べるキャリアの幅が広がります。実は、一般的な保育園以外にも、保育の専門性を活かせる職場は多く存在しています。
具体的には、以下のような職種が挙げられます。
• 企業内保育(企業の福利厚生として、社員の子どもを預かる)
• 病児保育 (体調不良の子どもを預かる保育施設)
• ベビーシッター (家庭で子どもを預かる)
• 放課後等デイサービス (障がいを持つ子どもへの支援を行う施設)
• 児童養護施設 (家庭で育てられない子どもを支援する施設)
• 母子支援施設 (母子家庭を支援する施設)
• 居宅型訪問保育(家庭に訪問して保育を行う)
また、これら以外にも、子ども向けの商品やサービスを提供する企業や、教育・人材関連の分野でも保育士資格を活かせる仕事があります。
保育士資格を活かす転職先はさまざまで、現場以外でのキャリアも充実したものにできる可能性があります。
保育士の資格を活かせる転職先については、こちらの記事で詳しく解説しています。
・「保育士への転職、メリットや注意点は?40代、50代でもOK!」
保育士資格や保育の経験に直接関係のない異業種への転職も立派な選択肢です。実は、保育現場で培った経験やスキルは、さまざまな業界で十分に活かすことができます。
保育士から異業種への転職先としては、以下のようなものがあります。
• 事務職や一般企業
• 接客業や販売業
事務職や一般企業では、保育現場での書類作成や記録などの事務作業が役立ちます。さらに、保護者対応で磨いたコミュニケーション能力も活かせる場面が多く、営業職などでも即戦力として活躍できる可能性があります。
また、接客業や販売業に転職した場合、保育現場で培った「人の気持ちを汲み取る力」が活かされます。子どもや保護者が何を望んでいるか、どんなことで困っているのかを察する能力は、客やクライアントの要求を素早く理解し対応する力に繋がります。特に、子ども服やおもちゃを扱う店舗では、保育士としての知識や経験を活かして、専門的なアドバイスをすることも強みとなるでしょう。
新たな資格を取得し、異なる職種で再スタートするという選択肢もあります。特に医療、福祉、IT分野では、保育士の経験やスキルを活かしやすい環境が整っています。
医療や福祉分野では、保育士の経験を活かして社会福祉士や介護福祉士の資格を取得し、転職することが可能です。これらの資格は取得しやすく、転職先として人気があります。また、保育カウンセラーや精神保健福祉士などとして、子どもや家庭の支援に携わる道も開かれています。
IT分野に転職を目指す場合、基礎的な知識を証明するITパスポートや基本情報技術者試験の資格を取得することで、転職活動が有利になります。さらに、保育士の経験を活かして子ども向けプログラミング教室の講師を目指すといった選択肢もあります。
いずれの資格も、働きながら取得できる環境が整っており、通信講座やオンライン学習サービスを利用すれば、自分のペースで学習できます。また、夜間や土日コースを開講している専門学校も多いため、仕事を続けながら資格取得を目指すことが可能です。
「辞めたいけど、生活は大丈夫かな…」と不安になるのは自然なことです。まずは、再就職までの生活費をきちんと管理しましょう。水道・ガス・通信費などの固定費を見直したり、趣味や買い物を少し控えたりして、支出を抑える工夫が大切です。
また、公的な支援制度も心強い味方です。2025年4月からは自己都合退職でも失業保険の給付開始が早まり、賃金の50〜80%が支給されます。そのほか、緊急小口資金や、家賃補助・再就職準備金貸付などの保育士向けの支援制度も活用できます。
制度を上手に使えば、少し気持ちに余裕を持って転職活動ができますよ。焦らず、ゆっくり次の一歩を考えていきましょう。