共働き家庭の増加や待機児童問題により、保育の専門職のニーズが高まっています。そんな中で「子どもに関わる仕事がしたい」と思ったとき、まず思い浮かぶのが保育士資格ではないでしょうか。
でも、いざ資格を目指そうと思っても、「どんな仕事に就けるの?」「試験って難しい?」「独学でも大丈夫かな?」といろいろな疑問が出てくるかもしれません。
この記事では、保育士資格の基本から、資格を活かせる仕事、取得方法、試験の難易度までをやさしく解説。独学で合格できるのかどうかについても、わかりやすくお伝えしていきます。
保育士の仕事内容を詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
・「保育士の仕事内容は?幼稚園教諭との違いから、簡単にわかりやすく解説」
保育士資格は、「保育のプロフェッショナル」であることを証明する国家資格です。
児童福祉法に基づいており、平成15年の法改正以降は、資格がなければ「保育士」と名乗ることができなくなっています。
保育士資格があれば、保育園、児童養護施設、乳児院、放課後等デイサービスなど、さまざまな現場で働くことができます。 仕事内容は、0歳から小学校入学前までの子どもに対する生活習慣の指導や、遊びを通じた発達のサポート、そして保護者の方への支援などが中心です。
同じ子どもに関わる資格としてよく比較されるのが「幼稚園教諭」です。幼稚園教諭は3歳以上の教育を専門にしていますが、保育士はもっと幅広い年齢の子どもたちを対象にしています。イメージとしては、幼稚園教諭が「教える」、保育士は「育てる」仕事と言えるでしょう。
保育士資格の取得方法は、大きく分けて次の2つです。
・養成校(大学・短大・専門学校など)を卒業する
・保育士試験に合格する
保育士試験は、年齢や学歴に関係なく(一部条件あり)受験できるため、社会人や主婦の方にも人気の資格です。以下に、学歴別の受験条件を解説します。
・大学:大学を卒業している場合は条件なしで受験可能。在学中の場合は2年以上在学していて62単位以上修得していれば受験可能。
・短期大学:短期大学を卒業している場合は条件無しで受験可能。在学中の場合は年度内に卒業見込みがあれば受験可能。
・専門学校:専門学校を卒業している場合は修業年限が2年以上の専門課程を修了していれば受験可能。在学中の場合は年度内に卒業見込みがあれば受験可能。
・高等学校:平成3年3月31日以前に卒業している場合は受験可能。平成3年4月1日以降の卒業の場合は児童福祉施設で2年以上かつ2,880時間以上の実務経験を積むことで受験可能。
・中学校:児童福祉施設で5年以上かつ7,200時間以上の実務経験を積むことで受験可能。
「せっかく保育士資格を取るなら、どんな仕事に活かせるの?」と気になりますよね。実は保育士資格を活かせる仕事は幅広いんです。
ここでは、「定番職種」「支援職」「関連職種」の3つに分けて解説します。
保育士資格を活かした定番の職種は、以下のようなものがあります。
保育士資格といえば、やっぱり保育園やこども園が代表的な活躍の場です。また、託児所や学童保育で働くにも保育士資格が必要です。他にも、企業や病院内に配置された保育施設でも働くことができます。
次にご紹介するのは、子どもや家庭を支援する仕事です。
保育士資格は、単に子どもの世話をするだけでなく、共働き世帯のサポートや親子の関係を支えるような支援の現場でも活かされています。
さらに最近では、保育士資格を幅広い分野で活かす動きも広がっています。
SNSやブログ、YouTubeなどで保育の知識を発信したり、副業やフリーランスで活動したりと、働き方も多様になっています。資格と実務経験を活かせば、保育の現場を離れてもキャリアを築くことができますよ。
保育士資格を取得する方法は、「保育士試験」と「養成校」の2つがあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
保育士試験について詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
「保育士試験とは?試験内容や難易度・合格率・勉強法を解説!」
保育士試験は、年に2回(前期・後期)行われる国家試験です。
受験資格を満たしていれば、年齢や職業を問わず、誰でもチャレンジできます。そのため、社会人や子育て中の方でも、自分のペースで学びながら目指せる方法なんです。
試験は、「筆記試験」と「実技試験」の2段階に分かれていて、それぞれ別日に行われます。
<筆記試験>
筆記試験(9科目・マークシート) 2日間にわたって以下の科目が出題されます。
幅広い内容ですが、毎年少しずつ合格科目を積み上げる「科目合格制度」もあるため、忙しい方でも続けやすいのが特徴です。
<実技試験(3分野から2つ選択)>
筆記試験に合格したら次は実技試験へ進みます。以下の3分野から、自分に合った2つを選んで受験します。
もうひとつの方法は、保育士養成校に通って資格を取得する方法です。
厚生労働省や都道府県知事が指定する養成施設で学び、必要な単位を修得して卒業すれば、試験を受けずに保育士資格を取得できます。
<指定養成施設の例>
この方法のメリットは、学生時代に保育士資格を取得できること。
カリキュラムに実習や演習も組み込まれており、基礎から実践まで体系的に学べるのが魅力です。資格試験の勉強に追われることもなく、安心して保育士を目指せますよ。
保育士試験は、全国平均の合格率が19〜30%前後と、やや難易度が高めの試験です。特に大変なのが、筆記試験の科目数の多さ。全部で9科目もあるため、勉強範囲が広く、計画的な学習が求められます。
筆記試験では、それぞれの科目に合格基準点が設けられています。
どれか1科目でも基準を下回ると、筆記試験全体が不合格になってしまいます。そのため、まんべんなく対策することがとても大切です。
実技試験では、「音楽表現」「造形表現」「言語表現」の中から得意な2分野を選んで受験できます。日ごろから音楽やお絵かき、読み聞かせが好きな方にとっては、自分の得意を活かせる試験とも言えますね。筆記よりも通過しやすいと感じる受験者が多い傾向にあります。
保育士試験には、うれしい科目合格制度があります。一度合格した科目は、3年間有効になるため、1年で全て受からなくてもOK。複数年にわたって、コツコツと合格を目指せる仕組みになっています。
結論からお伝えすると、独学でも保育士試験に合格することは十分に可能です!
独学合格に向けて一番大切なのは、「自分に合った教材を選ぶこと」と「ムリのない学習スケジュールを立てること」です。
<おすすめの教材>
学習スケジュールは、スキマ時間の活用がポイントです。余暇時間を学習に充てるほか、通勤時間や休憩時間、育児中なら子どもの昼寝中など、まとまった時間が取れなくても少しずつ進められます。
<1日1時間でもOK!実際の独学成功例>
たとえば、ある主婦の方は、1日1時間の勉強時間を半年間確保し、見事合格されています。スケジュールはこんな流れだったそうです。
毎日コツコツ続けることで、しっかりと知識が身につき、自信にもつながったそうです。
働きながら、あるいは育児中でも、自分の生活スタイルに合わせて学べるのが独学の魅力。忙しい中でも、少しずつ続けることで確実に前進できます。
どんな試験にも不安はつきもの。保育士試験も例外ではなく、多くの受験者さんがさまざまな悩みを抱えています。
ここでは、特によくある不安と、それに対するおすすめの対処法をご紹介します。
「試験範囲が広くて覚えきれない…」
筆記試験は9科目もあり、「何から手をつけたらいいの?」と戸惑う方が多いです。
そんなときは、最初の1〜2ヵ月で全体の流れをざっくりつかみ、その後は過去問から頻出テーマに絞って復習する方法が効果的です。また、覚えにくいポイントは紙に書いて、冷蔵庫や壁に貼っておくのもおすすめ!毎日自然と目に入ることで、記憶に残りやすくなりますよ。
「合格率が低くて自信が持てない…」
全国平均の合格率は20〜30%前後と聞くと、不安になるのも無理はありません。
でも、コツコツと計画的に勉強を続けていけば、十分に合格は目指せます。学習記録をつけたり、スケジュール帳に「今日の勉強内容」をメモしていくと、自分の成長が見えてモチベーションアップにもつながります。
「どうしても一人だと不安…」という方は、通信講座やスクールのサポートを活用するのもひとつの方法。プロの力を借りて安心感を得られると、ぐっと前に進みやすくなります。
「時間がとれない…」
仕事や家事・育児に追われ、「勉強する時間がまったくない!」と感じる方も少なくありません。
そんなときは、スキマ時間の活用がおすすめ。通勤中やお昼休み、子どもが寝たあとなど、1日15分でもOK。小さな積み重ねが大きな力になります。また、無理に時間を詰めすぎず、「休む日」もスケジュールに入れることが大切です。リフレッシュすることで、効率よく勉強できますよ。
「年齢的にもう遅いんじゃ…?」
年齢を気にしてしまう方も多いですが、実は保育士試験は年齢制限がなく、何歳からでも挑戦できる資格です。
40代・50代はもちろん、70代で合格された方もいるんです。「子どもに関わる仕事がしたい」「もう一度チャレンジしたい」という気持ちがあれば、年齢は関係ありません。不安が強いときは、通信講座や仲間との情報交換など、サポートを取り入れて、安心して進めていきましょう。
保育士資格を取った後は、保育園で働くだけが選択肢ではありません。
実は、保育士資格を活かせる仕事の幅はとても広く、保育園以外にも、児童養護施設や放課後児童クラブ、幼児教室の講師など、子どもと関われるさまざまな場所で活躍できます。
また、子ども向け商品やサービスを扱う企業で、マーケティングや企画といったお仕事に携わる方もいらっしゃいます。保育の専門知識があるからこそ、消費者目線で価値のある提案ができるんですね。
保育士の需要は高まっており、資格を持っていることで転職や再就職の場面でも大きなアドバンテージになります。特に、出産や育児でいったん仕事を離れた方も、復職支援制度や就職準備金の貸付制度などを活用すれば、安心して保育の現場に戻ることができますよ。
さらに、保育士資格を持っていれば、フリーランスや開業という選択肢もあります。具体的な職業には、以下のようなものがあります。
フリーランスや開業は、自分のライフスタイルに合わせて働けるので、育児や介護との両立がしやすくなるのも魅力。また、複数の仕事を組み合わせて働く「パラレルワーク」も増えてきています。保育の現場+ライター業、子育て支援+講師活動…など、働き方の選択肢はどんどん広がっています。
保育士の資格を活かせる仕事や、転職先の選択肢について詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。