政府が「待機児童ゼロ」を目指して「待機児童解消加速化プラン」を打ち出しました。これにより、今後一層、多くの保育士さんが必要になっていきます。しかし、巷で囁かれる保育士の給料は安い、という声・・・。果たして本当なのでしょうか?
そこで今回は、現実の保育士さんの年収事情について見ていきましょう。
保育士の給与は安い!と言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
年収ラボで確認しましょう。
出典:年収ラボ
仕事をする上で重要な要素である保育士の平均年収について見てみましょう。
初めに、理想の年収と現実の年収の違いがどれくらいあるのか、ニュース記事を参考に見てみましょう。
保育士の年収の平均は、 315万円でした。
平均年収は 300万円~340万円と予測されています。
給料(月収):約22万円
これはすごく初任給としては少ないとは言えない金額ですね。
しかしながら、保育士の給与が少ないと言われるのは、この金額があがらないからです。
新人で入っても、10年働いても給与がかわないと、「少ない!」と思ってしまいますよね。
この表は平均を取っているので、こんなにもらっていない!
16万前後だという保育士さんもいるでしょう。
実は地域差が大きいのも現状です。
特に地域間の格差は相当なものがあります。
全国平均は約332.5万円ですが、高い都道府県だと、東京都(369万円)、大阪府(347万円)、神奈川県(333万円) もらえます。
低いほうでは、佐賀県(220万円)、福島県(243万)、山形県(259万円)といった具合に、年収における地域格差は非常に大きいのです。
佐賀県の220万の年収で考えると、月収は10万も行かないということになります。
保育士の明細を見ると残業手当がついていないのも現状です。
これでは保育士の給与が安いと言われても仕方ありませんね。
地方は生活するのに首都圏ほどお金が掛からないとは言うものの、最高と最低の地域格差は早急に改善が必要になります。
続いて、再就職時の希望年収平均額と現在保育士年収平均額をご紹介します。
再就業時全体(※1) | 255.8 |
過去正規職員(※1) | 269.8 |
過去有期契約職員(フルタイム)(※1) | 253.2 |
過去有期契約社員(パートタイム)(※1) | 225.9 |
正規職員雇用のみ希望者(※1) | 307.3 |
パート・非常勤雇用のみ希望者(※1) | 154.9 |
(※1:希望額、単位:万円)
現在保育士全体(※2) | 212.4 |
現在正規職員(※2) | 269.2 |
現在有期契約職員(フルタイム)(※2) | 206.2 |
現在有期契約職員(パートタイム)(※2) | 104.1 |
(※2:実態額、単位:万円)
(参考:東京都保育士実態調査報告書 平成26年3月)
これによると、正規職員の場合は、希望額と現実額に、そこまでの大きな差は生じていないことがわかります。しかし、フルタイムやパートタイムで働く有期契約社員の場合には、理想と現実の年収の差が実に大きいことがわかります。これでは配偶者や子供がいる潜在保育士が、まずパートで保育士の仕事を始めたいと思っている場合に、非常に受け入れがたい現実ですね。
それでは、どうして保育士の現実年収がこれほどまでに低いのか、その原因を探っていきましょう。
求人正社員の初任給は約20万円と、決して安すぎる水準ではありません。それでは、なぜ、現実平均年収が低いのか、それには、保育士という職業柄の問題が大きく関わっています。
また、私立保育園の運営の仕組みも昇給に大きく絡んでいきます。
認可私立保育園の場合、保育児童の保護者からの保育料と、市町村から分配される公費負担の運営費が収入源となります。
まず保護者からの保育料は、世帯所得や第何子か、子供の数などにより計算され、親は、その金額を支払うことになります。同じく市町村からの運営費も、保育所に在籍する児童の年齢ごとに計算され、その金額が各々の保育所に支払われることになるのです。
在籍保育士の勤続年数に伴い、分配される運営費に多少の加算はあるものの、保育所は、決まった金額の中で保育を行わなくてはいけないため、勤続年数によって、ひとりひとりの保育士に手厚い昇給をすることなどできないのが現状なのです。
しかしながら保育士の中でも待遇の良い場所もあります。
それが「公務員保育士」です。
公務員保育士というのは、地方自治体が運営する公立の保育所に勤める保育士のことを指します。一方、民間の保育園などで働く保育士さんは、私立の保育士と言うことになります。
まず、以下の表を見てみましょう。
これによると、全体平均では、公設であれ私立であれ、公設の保育園で働く保育士が、平均年収額が高いことが一目瞭然です。しかし、正社員ではなく、有機契約社員の場合にはそうとは限りません。社会福祉法人や株式会社の民設・民営の場合、フルタイムの有機契約社員の場合は、公設・民営の保育士よりも平均年収が高いことがわかります。
そして同じくパートタイムの保育士の場合には、公設・公営よりも社会福祉法人で働く保育士さんの方が、平均年収が高いことがわかります。
公設で働く保育士の場合、公務員になりますので、育休などを経て職場復帰をするケースも多く、保育士の平均年齢も上がっています。そのため、平均年収も公設保育士の方が高い金額になっていると言えるでしょう。
ここまで、保育士の給料に関して楽観的とは言えない内容を書いてきましたが、ここで、将来に向けた明るい話題を取り上げてみたいと思います。
保育士の給与は引き上げへと向いているのです。
厚生労働省は2017年度から「副主任保育士」「専門リーダー」の役職を設け、給料アップを図る考えを明らかにした。来年度予算に540億円を計上するとしており、保育士の3人に1人が4万円を受け取れる見込みです。
前にも述べたように政府は「待機児童解消加速化プラン」により、平成29年度までに、約40万人の保育を確保するとしています。
そしてそのためには、保育士の求人も当然増えていきます。
平成27年4月から新しくスタートした「子ども・子育て支援新制度」では、民間の保育士のお給料が平均3パーセート改善されました。
また、公務員給与の見直しに準拠して、保育士のお給料が2パーセート改善され、これにより、併せて5パーセントのお給料が改善されたことになります。
5パーセントとはいえ、この増額が基準となり、ボーナスにも多少なりとも反映されるとなると思うと喜ばしいニュースですよね。
潜在保育士、いわゆるブランクのある保育士さんにも朗報です。保育士の有資格者であっても、現在、他の職業についていたり、一度も保育所で働いたことがない場合でも、保育士・保育所支援センターにて、職場復帰、再就職支援のための実技研修などを行っています。保育士として働きたいけれど少しでも迷いがある場合は、不安を解消してから職場復帰できるよいチャンスですから、こうした場もぜひ活用してみましょう。
国は給与引き上げに向かって動いていますが、もっと年収をあげたいと思うのであれば、働く場所を変えましょう。公務員になるのもいいでしょうが、特定の私立保育園の給与も高いです。
共働き世帯が増えているということは、保護者の収入が多い人も増えているということです。子どもの教育に惜しみなくお金を出せる人もいます。
「右脳教育」や「英語教育」「体育」に特化した教育もできる、もしくは病児保育士のように病気の児童を保育できるなどといった、保育以外の特技を持った保育士は、重宝されます。
そういった特色をうちだしている民間保育園は、無認可かもしれませんが、かなり手厚いサポートを打ち出しているところもあります。
障害児の保育や、児童養護施設の保育士なども、通常の保育園よりは給与が上がる傾向にありますので、様々な方向から転職を考えるのも給与アップにつながると思います。
そして、そういう保育所を求めている保護者が増えてきているようです。そういう保育園を探すのも給与アップの一つの方法になります。
まだまだ平均年収など現実的に厳しい面も多々見られますが、これからは、保育士の仕事に対する明るい兆しに期待して、自分にピッタリの職場探し、保育所探しをしてみましょう。