保育士への就職や転職を考えている方の中には、「収入面が気になる」という方も多いのではないでしょうか。保育士は「お給料が低い」というイメージを持たれがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では、保育士の平均年収や雇用形態・勤続年数による違い、そして年収アップのヒントまで、わかりやすくご紹介していきます。
保育士の仕事内容を詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
・「保育士の仕事内容は?幼稚園教諭との違いから、簡単にわかりやすく解説容」
まずは、厚生労働省の調査をもとに、保育士の平均年収について最新データを見ていきましょう。正社員・パートの項目に分けて紹介します。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、保育士の正社員とパートでは、以下のような年収の違いがあります。
この平均年収は、フルタイム勤務を想定して、所定内給与(または時給)と賞与などをもとに計算されています。
正社員の平均年収は約393万円、パートの平均年収は約300万円となり、正社員とパートでは、平均で約93万円の差があることがわかります。他の職業と同様、保育士も基本的には正規雇用のほうが収入は高くなる傾向にあります。
ただし、パートの場合は賞与が出ないケースや短時間勤務も多いため、年収は個人差が大きいことも特徴です。上記の数値はあくまで参考としてご覧ください。
続いて、男女による収入の違いも見てみましょう。
正社員の場合では男性保育士の平均年収は約424万円、女性保育士の平均年収は約392万円となり、パートの場合では男性保育士の平均年収は約384万円、女性保育士の平均年収は約251万円となります。正社員・パートともに、男性の方が平均年収は高い傾向にあります。特にパートでは、フルタイム勤務を想定すると、男女で約133万円の差が見られました。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の年齢ごとの平均年収の目安は次のとおりです。
保育士は、現場での経験や積み重ねてきたスキルがきちんと評価され、給与に反映される仕事です。努力や能力が認められれば、20代でも管理職に抜てきされて、平均年収を上回ることもあります。
特に、15年以上のベテラン保育士になると、平均年収は460万円を超えます。これは、日本人全体の年収中央値(約407万円)を上回る水準です。子どもたちの成長を支えながら、しっかり収入を得られるのが保育士という仕事なんですね。
どんな職種でも、働く場所や地域によって収入に差が出ることがありますよね。保育士もその例外ではありません。ここでは「職場別」と「地域別」に、保育士の年収の違いを見ていきましょう。
一般的な保育士として働く場合、公立保育園と私立保育園の年収は約360万円前後と大きな差はありません。ですが、昇給や福利厚生の面で違いがあります。
<公立保育園>
公立保育園は、地方公務員として働くため、年功序列の昇給制度がしっかりしています。経験を積めば自然と収入も増え、30代で年収400万円を超えることも。退職金や年金制度など、福利厚生が充実している点も安心材料です。
<私立保育園>
私立保育園は、運営母体によって給与や待遇が異なります。実力主義の園も多く、若くして管理職に就けば、平均以上の年収を得られるチャンスも。ただし、園ごとの差が大きいため、事前のリサーチが大切ですね。
・公立こども園:平均年収は約345万円。地方公務員として安定した昇給制度が魅力です。
・私立こども園:平均年収は約336万円。給与水準は公立にやや劣るものの、園によっては待遇が良いところもあります。
・企業内保育所:中小企業(社員1,000人未満)では約300〜320万円。大企業(社員1,000人以上)では約392〜620万円と保育士全体の平均年収約393万円を上回る高年収の傾向もあります。
・病棟保育士:平均年収は約350〜500万円。病棟保育士を配置している病院は大きな病院が多く、福利厚生も手厚いのが特長です。
東京などの都市部では平均年収が約450万円に達する一方で、地方では300万円台前半に留まることも多く、その差は100万円以上になることも。東京・大阪・その他の地域の収入の差についてまとめました。
都市部は物価や家賃が高く、保育士の需要も高いため、給与水準が自然と上がります。地方では生活費が安いメリットがあるため、生活の質自体はそこまで差がない場合もあります。
保育士として働く場合、正社員・契約社員・パート・派遣など、雇用形態によって年収や待遇に大きな違いがあります。ここでは、それぞれの雇用形態の年収や福利厚生の特徴について、わかりやすく表にまとめました。
年収や待遇の面で最も安定しているのは、やはり正社員です。賞与(ボーナス)や昇給があり、退職金制度などの福利厚生も充実しています。 長く安定して働きたい方には、正社員がおすすめといえるでしょう。
一方、契約社員・パート・派遣などの非正規雇用では、ボーナスや昇給がない、もしくは少ない場合が多く、年収面ではやや不利になります。また、福利厚生を受けるためには「週20時間以上勤務」などの条件が設けられていることがほとんどなので、 事前に確認することが大切です。
保育士はやりがいのあるお仕事ですが、その一方で「お給料が少ない」と感じている方が多いのも事実です。ここでは、保育士の収入に対する不満や、働くうえでの課題について見ていきましょう。
全体の平均年収(全業種)は約460万円といわれる中、保育士の平均年収は 約393万円。その 差はおよそ67万円と、決して小さくありません。
「子どもの命を預かる責任のある仕事なのに…」という声も多く、特に若手の保育士さんは管理職を含めた平均に比べて、さらに低い年収になっているのが現状です。
保育士の仕事は、早番・遅番のシフト制に加え、行事の準備や書類作成、保護者対応など、本当にたくさんの業務があります。
「定時で帰れる日は奇跡」「持ち帰りの仕事が当たり前」という声も珍しくなく、実質的には1日9時間以上働いている人も多いのです。
厚生労働省の調査によると、保育士の離職率は9.3%。全国に約59万人いる保育士のうち、毎年約5.5万人が職場を離れているという計算になります。
離職率自体は他の業界より低めではありますが、背景にはやはり「給料の安さ」や「長時間労働」への不満があると考えられます。
このような現状から、給与や労働時間の見直しなど、 保育士が働きやすい環境作りがいま求められています。
「保育士のお給料は低め…」といわれていますが、工夫次第で年収を上げることも十分に可能です。ここでは、実際に効果が期待できる方法をいくつかご紹介します。
① 管理職にキャリアアップする
もっとも確実な方法は、主任や園長などの役職に就くことです。基本給が上がるだけでなく、月5,000~40,000円ほどの役職手当が加わるため、トータルで大きな年収アップが期待できます。
② 公務員保育士になる
公立保育園などで働く「公務員保育士」は、年功序列の安定した昇給が特徴。主任クラスになると、年収が500万円以上になることもあります。福利厚生も手厚いため、将来を見据えた働き方として人気です。
③ 資格を取得して手当を得る
特定の資格を持っていることで、資格手当が支給されるケースもあります。
・英検などの語学系資格(英語教育に力を入れている園で有利)
・幼稚園教諭免許(保育士と両方持っていると手当対象になる場合も)
どんな資格が評価されるかは園によりますが、できることが増える=評価されることに直結します。
④ 副業でスキルを活かす
最近では、保育士としてのスキルを活かして副業をする人も増えています。
・ベビーシッター
・オンラインでの子育て相談
・子ども向け教材や絵本の制作 など
本業に支障が出ない範囲であれば、プラスの収入を得る手段として選択肢のひとつになります。
年収アップは簡単ではないかもしれませんが、少しの工夫や努力で変えていける道もあるということ。今できることから始めて、将来に備えておくのも大切です。
保育士の仕事には、お金には代えられない大きなやりがいがあります。
たとえば、子どもたちの「できた!」という小さな成長を間近で見られること。日々の関わりの中で、泣いていた子が笑顔を見せてくれるようになったり、できなかったことが少しずつできるようになったり…。そんな一瞬一瞬に、心が温かくなる瞬間があります。
数年後に成長した子どもたちが顔を見せに来てくれることもあり、「この仕事をしていて本当によかった」と感じられる瞬間は、何物にも代えがたい宝物です。
保育士の仕事は、将来性もあります。
厚生労働省の調査によると、共働き世帯は年々増加しており、
・平成18年:977万世帯
・平成22年:1,000万世帯突破
・令和3年:1,247万世帯超
と大きく伸びています。今後もこの流れは続くと考えられており、保育士の需要はさらに高まる見込みです。
AIやテクノロジーが発展しても、子どもの成長を見守り、心に寄り添うことは人にしかできない仕事です。だからこそ、保育士という職業は今後も長く必要とされ続けます。
保育はただの「子守り」ではなく、子どもの人格や生きる力の土台を育てる大切な仕事です。一人ひとりの子どもと丁寧に向き合うその姿勢が、やがて社会全体の未来を支えることにつながっています。
収入面だけでなく、やりがい・将来性・人間としての成長が詰まった保育士という仕事。心から誇れる、素晴らしい職業ですね。
保育士の資格を活かせる仕事については、こちらの記事でわかりやすく解説しています。
・「保育士資格とは?活かせる仕事、取り方、難易度を解説!独学で取得できる?」
保育士の平均年収は、雇用形態・勤続年数・役職によって大きく変わります。
現状では日本の平均年収よりもやや低めで、「業務内容に対して見合っていない」と感じる声も多いですが、給与や待遇の改善に向けた動きも進んでいるところです。
保育士は日本の未来を担う子どもを育てる働き甲斐のある仕事です。自分がどんな保育士になりたいのかを考えながら、収入や職場環境にも目を向けて、納得のいく就職・転職を目指していきましょう!
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