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保育園・幼稚園でのプール遊びで注意すべきこと|事故を未然に防ぐ考え方や対策をご紹介!

夏の保育といえば、子どもたちが大好きな”プール”!子どもたちにとってプールは、呼吸筋や心拍機能の成長を促進するだけでなく、水に親しみながらお友だちとのコミュニケーションを図ったり、水が苦手な子には挑戦する気持ちを育んだりなど、様々なことを学んだり、体験できる機会となるでしょう。しかし、その反面、プールは事故が起きやすい側面もあり、常に危険とは隣り合わせです。水難事故が起こらないようにするためにも、しっかりと事前に対策を講じることは大人の役目でもあります。そこで今回はプール遊びについて、保育士や幼稚園教諭の方はもちろん、保護者の方々にも知っておいていただきたい、事故の原因や対策などを紹介してみます。

過去に起きたプール事故の3つの事例

まずは、過去に起きてしまった保育園、幼稚園でのプール事故の事例を見てみましょう。このような事故が2度と起きてしまわぬように心に刻んでおくことが大切です。

プール事故事例① 埼玉県さいたま市のプール死亡事故(2017年8月24日)
さいたま市の認可保育園「めだか保育園」のプールで園児の赤沼美空(みく)ちゃん(4)が死亡した事故で、黛(まゆずみ)秋代園長(67)は26日、記者会見し、プールを監視していた保育士2人が事故発生時には園児らから目を離していたことを明らかにした。埼玉県警は保育園の対応に問題がなかったかを調べている。
黛園長によると、事故が起きた24日は今夏のプール最終日で、保育士2人は園児をプールの端に集め、取り付けていた滑り台を片付けていた。その際、園児から目を離し、作業後に他の園児が指さす先を見ると、水面に美空ちゃんが浮いていたという。黛園長は「目を離した時に事故が起きた。(片付けと水遊びを)一緒にすべきではなかった」と述べた。
引用出典:朝日新聞デジタル

保育士は2人いたものの、プール遊びを監視する保育士は一人しか配置しておらず、国のガイドラインに反し、安全管理義務を怠ってしまったとされます。さらに、仮設式のプールだったことも溺れやすかった可能性が考えられています。また、この国のガイドラインは下述の2011年の神奈川県大和市の幼稚園プールで起きた男児の死亡事故がきっかけとなり内閣府が2016年から策定したものとなります。

プール事故事例② 神奈川県大和市のプール死亡事故(2011年7月11日)
11日午前11時半ごろ、大和市大和東1丁目の大和幼稚園の室内プールで、水遊びをしていた年少組の園児がうつぶせで浮いているのを、女性教諭(23)が見つけた。園児は搬送先の病院で午後2時ごろ、死亡が確認された。大和署が原因を調べている。
同署などによると、死亡したのは同市鶴間の会社員の男性(36)の長男(3)。プールは直径約4・75メートル、深さ約65センチ。園側は事故当時の水深を20センチほどと説明している。
事故の10分ほど前から年少組の2クラスの園児計29人が入り、ビート板や浮輪などで遊んでいたという。1クラスが先生の合図で水から上がると、ほぼ中央で長男が浮いていたという。別の女性教諭(21)らが引き上げた。

園側は蘇生措置を施し、近くの医療機関に運び込んだという。医療機関は午前11時55分ごろ、119番通報で市消防本部に別の病院への転院搬送を依頼し、午後0時10分ごろ市立病院に到着。長男は心肺停止状態だったといい、午後2時ごろ死亡が確認された。目立った外傷はなく、同署は事故と病死の両面で捜査している。12日に司法解剖し、死因を調べる。
同園長は「(長男は)水を吐き、目を少し開けていたので、園医でいろいろな処置を一生懸命していただいた。帰らぬ命となり、ご両親へのおわびで胸が張り裂けそうです。皆さまにご心配をお掛けしたことをおわび申し上げます」などと文書でコメントした。
引用抜粋:神奈川新聞

当時3,4歳児の年少2クラス計29名の水遊びを2名の幼稚園教諭が指導にあたりましたが、一人は園児と一緒にプールに入っていたため、実質監視役の教諭は一人だけという現状だったそうです。男児は、少なくとも約2分間溺れた状態だったため、園医だけの対応で無闇に身体を動かさずに、緊急搬送を即座にするべきでした。

プール事故事例③ 京都府上京区のプール死亡事故(2014年7月30日)
事故は14年7月30日午後2時ごろ、園舎屋上のプールで起きた。約30人の園児がプール遊びをする中、天翔ちゃんが水に沈んでいるのを保育士が見つけた。既に呼吸と心肺が停止している状態で救急搬送された。
「トイレで嘔吐(おうと)して倒れた。意識はある」。両親は当初、園側から電話でそう聞いていた。しかし、病院で医師から「意識がない。1分1秒を争う状況」と説明を受けた。英樹さん(父親)は園長に説明を求めたが「適切に処置をした」と繰り返すばかり。保育士が「プールでおぼれた」と話し、ようやく状況を把握した。

天翔ちゃんは一度も意識が戻らないまま、1週間後の8月6日、低酸素脳症で亡くなった。
引用抜粋:京都新聞

水深約25センチのプールで保育士が2人もついていながらも、子どもたちから目を離す時間があったなどとして起きてしまった事故でした。実は2019年になっても保育園側と遺族側で裁判が続いており、先日2019年5月16日やっと園側が保育士2人には子ども達の安全管理に不備があったとして、注意義務違反と園にも責任があると認められました。

【最新】水難事故の統計データをご紹介

ここで、警察庁生活安全局地域課が平成30年9月13日に発表しております水難事故の統計データを見ていきましょう。

※出典:警察庁生活安全局地域課「平成30年夏期における水難の概況」

上図から、水難事故の発生状況としては、過去5年間の推移を確認すると、子どもの水難事故は年々減少している傾向にあることが分かりました。また、平成30年の調査結果を見てみると、総数502件(595人※水難者数)に対し、子どもの水難事故が81件(117人※水難者数)となっており、この事故の中で71件は無事救出されたことが分かります。

水難事故における子どもの死者・行方不明者の場所

  平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年
人数 人数 人数 人数 人数 構成比
9 11 2 4 4 28.6%
河川 15 12 12 7 7 50.0%
湖沼池 1 2 3 1 2 14.3%
用水路 3 1   1 1 7.1%
プール   2 2 1   0.0%
その他   1       0.0%
合計 28 29 19 14 14  

※出典:警察庁生活安全局地域課「平成30年夏期における水難の概況」

子どもの場所別の死者・行方不明者数について、過去の5年間の調査報告を見ると、最も多い場所が河川、続いて海や湖沼池であることが分かりました。
このうち、平成30年はプールでの死者・行方不明者数は0人となっていましたので、過去の痛ましい事故を教訓として、保育園・幼稚園の職員やプール指導・見守りに関わる全ての方の安全に対する意識の高さが功を奏した結果ではないでしょうか。今後もこの“0人”を保っていくことが大切となりますね。

プール活動・水遊びを行う場合の事故防止に関する園の意識調査

消費者安全調査委員会(消費者の生命・身体の安全を脅かす事故の原因を究明し、再発防止と被害軽減策を講ずることを目的に消費者庁に置かれる委員会)が行った調査を見ると、全国の幼稚園、保育園、認定こども園の園長や職員の約6割は「プールで子どもが溺れるなどの事故を想定とした訓練を行っていない」と回答していたことが分かりました。
また、関係行政機関から保育施設等にプール活動・水遊びを行う場合の事故の防止についてガイドライン及び通知が発出していますが、消費者安全調査委員会の調査によると、「改善を検討したが、実行は見送った」「改善は検討していない」と回答した園に理由を確認していますが、「改善の必要性を感じなかった」(43%)、「人員が不足している」(23%)、「他に優先順位の高い施策がある」(17%)といった実態を明らかにしており、多くの課題があることを浮き彫りにしています。消費者庁は、「幼稚園などのプール事故は監視者がいない場合に起きることが多いので、監視員が配置できなければプール活動を中止してほしい」との呼びかけを行っています。こうしたプール事故の防止策としては、「応急処置の日常的な訓練」「プールの監視者と指導者を分けて配置する」「事故を未然に防ぐための事前教育」などの具体的な試行を文部科学省ならび厚生労働省に求めています。

※出典:消費者安全調査委員会「教育・保育施設等におけるプール活動・水遊び に関する実態調査」

プールでの事故を未然に防ぐためのルール作り

子どもにとって「プール」は、泳いだり、水中に潜ったりしながら、大いにはしゃいで過ごせる「楽しい時間」です。好奇心旺盛な子どもにとっては、すっかりと水の危険のことは忘れてしまい、夢中になって遊んでしまうことが多いのも「プール」の特徴といえるでしょう。そうしたことも踏まえ、子どもを保育する園や職員としては、子どもたちに水に対する危険やルールなどをしっかりと伝えていく必要があります。大人だけでなく子どもたちも水の事故に対する危険性の理解を深めていき、プールでの事故を未然に防ぐ取り組みをすしていくことが重要となるでしょう。まず、プールで安全に遊ぶためのルール として、5つの“プール遊びの約束”を挙げてみます。どんなに毎回遊んでいる場所だとしても、必ずしっかりと説明してからプールを開始しましょう。

子ども達とのプール遊びの5つ約束!
1プールサイド(周辺)は走らない
2プールに飛び込まない
3(プールの中でも外でも)お友だちを押さない
4水を苦手なお友だちや嫌がっているお友だちに水をかけない
5お友だちの上に乗らない

プール事故を引き起こす原因・種類とは?

続いて、プール事故の原因となる主な4つをあげていきます。

①飛び込み事故

子どもがプールに飛び込むことで、プールの底や壁などに頭や体を強く打ち付け、入水時に怪我をしてしまうのが飛び込み事故です。
飛び込みは、小中学校の体育の授業でも禁じられていますが、未発達な状態にある子どもは、運が悪ければ大人になっても後遺症が残るなど、その影響は計り知れません。また、指導員が目を離している隙にあるいは監督者が誰もいない時に飛び込んで、泳ぐ技術も身についていなければ、最悪の場合には死亡にまで発展する危険性も伴うでしょう。さらに、プールの水位を低くして溺水事故を防止しようとすれば、バランスを崩して体を打ち付けてしまうようなことになると、むしろ危険性も高くなります。特に、スイミングに通っているような水に慣れた幼児にも油断は禁物で、スイミングと同じような感覚で「飛び込み」をしようとする子どもがいると、場合によっては周囲の子どもも巻き込んで怪我をすることもあります。

②溺水事故

水難事故として多いのが溺水事故になりますが、子どもの水遊びではとくに溺死が多く、大人でも入浴中に居眠りなどして溺水して死亡する方がいます。「溺水」は、喉の気道内に水や液体が入り、気道が閉まって窒息するなど、水難事故としは特有のケースとして挙げられるでしょう。溺水事故の怖いところは、子どもは対処能力が弱いため、気管内に水が入ると、もがくこともできずに溺れてしまう場合があることです。そのため、声に出すことや手足もうまく動かせない状態で溺れるため、監視している指導員や保育士も傍にいながら気付くことができず、発見が遅れてしまうことが多いのです。とくに小さい仮設プールでは、子ども達が密集してしまうため、中で倒れていても他の子どもの陰に隠れしまい、発見が難しい場合があります。こうしたことに加え、「二次溺水」という事故も増えています。二次溺水とは、溺れかけた際に肺が水に入り、時間が経過してから、後になって咳、発熱、胸の痛み、極度の疲労感に見舞われてしまうことです。放置すれば呼吸困難を引き起こす場合もあるので、溺れた後でも注意しなければなりません。

③転倒事故

プールサイドは、人の出入りが激しいこともあり、床を何度拭いても濡れていることが多く、普通に歩いているつもりでも、転んでしまうことがあります。このような状況で起こる事故を転倒事故と呼んでいますが、成長過程にある子どもの場合、踏ん張りきかず、受け身が取れなくて頭を打つようなこともあるでしょう。大人でさえも滑って転倒することがあるくらいなので、子どもの転倒事故は更に増えます。子どもの場合、体つきとして頭が大きく、成人に比べて重心の位置が高いため、転倒して頭を怪我することも多いと言われているので注意が必要です。

④プールの排水溝の吸い込み事故

プールには必ず水を排出する排水溝がついていますが、この排水溝に小さな子どもは全身又は体の一部が吸い込まれてしまう事故があります。これをプールの排水溝の吸い込み事故と呼んでいますが、1960年代~2000年代にかけてこの事故が多発したため、その後は管理の強化と改善が進み、現在では排水溝の吸い込み事故はだいぶ少なくはなりました。しかし、2006年になりますが、埼玉県ふじみの市の市営プールで「吸い込まれ防止柵」が外れていたことで女の子が亡くなった事故が起きており、決して安全とは言い切れない状況にあることは変わりありません。

必見!プールの安全確認チェックリストを公開!

とにかくプール遊びには“安全確認”を徹底し管理することが事故防止へと繋がります。
去年も大丈夫だったからと未確かな自信におごることなく、点検しなければならない箇所を一つ一つ、丁寧にしっかりと確認をしましょう。
下記がプールの安全確認ポイントとなります。

プール遊びの前の安全確認チェックリスト
プールやプールサイドまわり □プールサイドは十分な広さを確保しているか
□プールサイドは滑りにくい素材やゴムマットを敷いているか
□破損部分や劣化部分などはないか
□尖った危険物などはないか
□虫や浮遊物は浮いていないか、水質は問題ないか
□水温が低すぎないか
□監視員としての人員を確保できているか

排水溝まわり □排水溝の場所を把握しているか
□排水溝に吸い込み防止金具の設置がされているか
□排水溝の上に金網のような蓋は設置されているか
□上記の排水溝の吸い込み防止金具・蓋はきちんと固定されているか

緊急体制まわり □体調が悪くなった子どもが安静にできる救護場所や部屋はあるか
□救命具やAED(自動体外式除細動器)等の準備はできているか
□すぐに身体から水分を拭うことのできるタオルは準備できているか
□すぐに脱水症状の防ぐため水分補給ができるよう飲みものは準備できているか

プール遊びの際に注意すべきポイントとは?

ここでは、保育園でのプール遊び時に注意すべき点をまとめてみました。

プール遊び前
・保護者と健康状態の確認を入念にする
・食べた後すぐに入水しない
・排せつを済ませてあげる
・耳や爪を清潔にする
・水着の紐は短く結ぶ
・水泳帽を着用する
・準備運動をする
・点呼をとる
プール遊び中
・炎天下の中で長時間入らない
・ふざけたり走ったりしていないか確認をする
・水が怖くて泣いている子は落ち着かせてあげる
・複数の保育士で見守ること
休憩時間
・定期的に休憩をする
・日陰で休む
・全身の水を拭き取る
・タオルをかけて身体を温める
・冷たすぎる飲みものは避ける
・随時体調を確認する
大人数でのプール遊びの注意点
・医師判断で止められている子どもは入水させない
・見守る保育士の役割を決めておく
(プールの外から監視する人・プールに一緒に入る人・緊急時に対応する人等)

監視役は“プール監視役のみ”の仕事をすることが大切です。多くの園では園長や主任が兼任することが多いのですが、電話対応や来客に少しの間出てしまうことあるそう。これは少しの間でも子ども達から目を離してしまうことになり監視が欠けるリスクは、はかり知れませんのできちんと専任することをオススメします。また、プール遊びの予定をしていなかったのに、暑いから突然「じゃあ、プールに入ろうか」「プールに入りたい?」と行うことは絶対禁止です。職員間の役割分担もなにもない状態ですることになるため、非常に危険な体制で保育をすることになってしまうので止めることを推奨します。
これらを十分に配慮して、子ども達の異変を少しでも感じたら水遊びだけでなくプールの入水を見送ることを検討しましょう。

夏休み中や園外保育でも水難事故に気をつけて!

子どもの“水”に関係する事故は、プールだけではありません。園外保育で川や海にいくこともあるでしょう。そこでも事故が起きることにも十分に注意が必要です。園外保育では、下記のポイントに気をつけながら、子どもの安全を第一に考え、無理はせず、状況に応じて適切な判断をするようにしましょう。特に園外での保育では、「行先で悪天候になって状況が変わるかもしれない」と危機管理意識を高めるように努めなければなりません。

川・海での注意ポイント!
・体調が悪い時は入水をしない
・悪天候の恐れがあるときは近づかない
・遊泳可能エリアを守る
・危険な場所を確認し近づかない
・必要に応じて“承認された”ライフジャケットを着用
・基本的な水難救助スキルと心肺蘇生を学んでおく

監視役は“プール監視役のみ”の仕事を専任にすることが大切です。多くの園では、園長や主任が兼任することが多いのですが、電話対応や来客に少しの間、その持ち場を離れてしまうことがあると言われています。そのような隙に事故が起れば発見も対応も遅れることになりますので、監視は専任者が常駐することが原理原則となります。仮に監視が持ち場を離れることが想定されるのであれば、監視を交代できる人員の配置を最初から考えておかなければなりません。また、同様にプール遊びで予定していた職員が欠席した場合でも、プール遊びの準備や体制が万全ではない場合には、プール遊びは控えておいたほうが良いでしょう。

まとめ
子どもにとって楽しいプール遊びですが、現在保育に携わる職員の方もしくは、これから保育の仕事をされる方にとって、水の事故が起こらないようにするため、細心の注意を払わなければなりません。特に大切なことは、危機管理に対する意識を高く持つことで、いくら子どもたちが楽しみにしていたとしても、園の準備や運用の体制が十分でなければ、見送る判断をしたほうが良い考えることも必要です。
そして、大人が子どもたちの安全を確保することはもちろんですが、子どもたちにもプールで遊ぶ時のルールや、水の危険性についてもしっかりと伝えていくようにして下さい。
これから保育士・幼稚園教諭の仕事に就かれる方などは、人命、水難救助なども学んでおくといざという時に役立つはずですよ。