保育士を目指している方であれば、「子どもが好きだから、子供の成長に関わる仕事をしてみたい!」といった夢を持ち、希望を膨らませて保育士の資格を取得した方も多いことでしょう。ところが、実際に保育士として働いてみると、賃金の問題をはじめ、人手不足による業務負担の大きさ、職場や保護者との人間関係などに頭を抱えている方が少なくありません。
そうした中で、保育士の仕事のやりがいを見つけ、どうやってモチベーションを高めれば良いのか、考えると悩んでしまいますよね…今回は、これから保育の業界で働くもしくは転職することを考えている人にとって、やりがいを感じるためにはどのようなことに取り組むべきなのか、実際に現場で働く保育士の体験談も交えながら、様々な気づきが得られるような保育に役立つ情報をお届けしていきたいと思います。
保育士の仕事をする方にとって、「之を知る者は之を好む者に如かず=(知る者よりも好む者、好む者より楽しむ者が勝っていること)」が大切であると同時に、長く続けていくためには「やりがい」を実感することがとても重要です。しかしながら、普段から何となく耳にするこの「やりがい」といった言葉は、あまりに漠然としているので、どのようなことがやりがいになるのか、改めて考えてみると意外に説明するのが難しいことに気づくでしょう。「やりがい」とは、仕事に対する「満足感」といった言葉に置き換えると分かりやすくなりますが、職場で関わる環境や人が対象となり、自身の「評価」「報酬」「将来」の3つの要素が満たされているかどうかを考えてみると整理できるでしょう。
例えば、保護者から「評価」してもらえたかどうかや、希望する「報酬」が得られているかどうか、その職場で「将来」も働き続けることができるなど、このようなことに「満足感」が得られていると「やりがい」を感じ、仕事に対するモチベーションが高まったり、辛いことがあっても乗り越えることができたりするようになるものです。
では、どうしたら「やりがい」は実感できるようになるのでしょうか?それは、「自分が子どもたちのお世話を全て引き受ける」といった責任感や使命感を持つように心がけることが方法として挙げられます。マニュアル通りや指示通りに仕事を進めていくのではなく、貴方自身が主体性をもって行動していくことで、周囲の評価を変えていくことが出来るようになるのです。
まずは、自分なりに課題を整理して、子供たちに最適な環境を提供するために何をすべきなのか、工夫や改善にチャレンジすることから始めてみると良いでしょう。次は、保育士がどのようなことに「やりがい」を感じているのか、そのポイントの説明や体験談なども交えて紹介していきます。
以上のようなものが一般的な“やりがい”とされています。もちろんやりがいがなくても仕事を続けていくことはできます。人によって働く軸や求める優先順位は異なるので、その軸や優先するものが給与や待遇などであれば、やりがいはさほど必要ないのかもしれません。しかし、他の職種に比べて保育士の給与や待遇は決して良いとは言えません。その中で保育士は一体何を“やりがい”として働いているのでしょうか。実際に保育士として働いている方の声を聞いてみましょう。
保育士に入った子供は、初めて親から離れて生活するケースが大半で、両親がいない不安などから泣き出してしまうこともあるでしょう。子供によっては、保育園に慣れるまでは、相当な時間を必要とする場合もあります。しかし、そうした子供の不安を解消し、子供たちが保育園で生活する環境を楽しいと感じると、子供たちから笑みがこぼれるようになります。保育士にとっては、子供たちの笑顔が見られることは、子供たちが安心して生活していることの評価を受け取る瞬間ともいえ、子供たちの笑顔は仕事をする上で、自信や「やりがい」に繋がる方が多いようです。
保育園では、保護者の代わりに保育を行っているため、子どもからすると保育士が第2の母親のような存在になります。また、言うことを聞かない子供がいれば、叱らなければいけないような場面も出てくることでしょう。しかし、愛情をもって叱ったつもりでも、子供が泣き出したりしてしまうと「自分は保育士に向いていないのではなかいか」と自信を無くす保育士も多いようです。そのような反面、「先生大好き!と子供から言葉をかけてくれたり、一目散に「○○先生~!」と駆け寄ってきてくれたりした時には、子どもとの絆を実感できます。日本理化学工業株式会社会長の故・大山泰弘氏の言葉で「人は誰かに必要とされるときに幸せを感じる※」と教えを導いており、保育士にも参考になりそうな文献なので紹介しておきます。子どもの数だけ必要とされる保育士になれば、保育士の仕事を続けていくうえでも、大きな原動力にもなることでしょう。ここでは、実際の保育士の体験談の一例や、保育士に役立ちそうな故・大山泰弘氏の文献も紹介しておきます。
働く幸せ 仕事でいちばん大切なこと |
・著者:大山 泰弘 ・出版社:WAVE出版 ・日: 2009/7/23 |
親元からから離れて生活する子供にとって、初めて集団生活をする保育園では、戸惑いを感じたり、物事が思い通りにいかず、感情的になって喧嘩をすることもあるでしょう。しかし、イベント行事などを通じて、保育士と子供たちが一緒に何かを成し遂げることを体験した時、その達成感から保育士の仕事にやりがいを感じるものです。集団生活を通じて、子供は様々なことを学び、成長していきますので、自己中心的で自分のことを最優先していた子供が、急にお友達に譲る気持ちが芽生えるのも珍しいことではありません。
保育園などの子どもを預かる施設は、モンスターペアレントに悩まされるというイメージがあるかもしれませんが、気難しい保護者ばかりでは決してありません。きちんとした保育を行い、保護者とのコミュニケーションも密にとることができれば、強い信頼関係を築くこともできます。毎日の送り迎えの時など、保護者から感謝の言葉をかけていただいたり、育児相談されたりすることで、保育士がやりがいを感じることも多いのです。保護者との信頼関係を築くことができれば、子どもたち一人ひとりに対してもっと知ることができるので、間違った対応をしてしまう可能性も低くなるでしょう。
子供の成長スピードは驚くほど早いため、「昨日できなかったことが今日できるようになっている」ことに気づかされることは珍しくありません。
そうした子供の成長の過程において、子供と接していく保育士が重要な役割を果たすことになりますが、その成長した姿を見ることができたときは、保育士としてやりがいに繋がることでしょう。特に、クラス担任として卒園を迎えるときなど、入園して来た頃と比べると心もからだも大きくなった姿を見ることで、再確認する方も多いようです。
保育士の賃金は、専門性がある仕事で且つ需要もありながら、仕事見合っていないなどの理由で離職する方が多くいるのも現状です。その仕事に見合った報酬が得られてこそ、保育士としてのやりがいを感じ、長く続けていくことにも繋がることでしょう。
保育士は、共働きなどで忙しい保護者の方に代わって子どもを預かっています。近年はより一層、共働き世帯の増加や核家族化によって、家庭内のみで子どもを育てていくのが難しい環境になってきました。そうした状況の中、保護者が安心して働くためには、保育園は必要不可欠な存在となっています。そう考えると、保育士は社会のニーズに応えており、今後の将来を支えていく子どもたちを保育することは、非常に社会貢献度が高く、子どもの人生の基礎となる大切な時期を預かる責任は重いですが、個性や才能を伸ばしながら“人”を育て、成長していく姿を見られるのは保育士としての醍醐味といえるでしょう。
保育の業界では、保育士を経験した後、保育の現場に留まらず、講師として講演会に参加したり、テレビなどのマスメディアにコメンテーターや評論家として出演したり、保育を題材に漫画家として活躍したりするなど、保育士の経験を活かして様々な分野で活躍している人たちがいます。ここでは、そんな保育界のカリスマを紹介してみますので、そのような人たちの活動から、保育の仕事のやりがいが何であるかを考えてみましょう。
・でこぽん吾郎(漫画家) |
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でこぽん吾郎氏は、保育士として働いていた体験をもとに、その当時のことを思い出しながらストーリーを作り、Twitter等で作品を紹介して人気を集めてるWEBの漫画家です。WEB漫画の作品に登場する「でこ先生」は、男性として登場していますが、実際には女性で保育士をされていた方だそうです。でこぽん吾郎氏の作品は、親からは見えない幼稚園での子供たちの姿が伝えていますが、保育士として活躍していたころに苦労したことや、子供たちと接して励みになったことなどが楽しく読むことができるでしょう。 |
・菊地政隆(学校法人菊地学園 理事長) |
菊地政隆氏は、男性保育士の先駆者と言われており、男性保育士に対する偏見が強い環境を変えようと、男性が保育士という職業に就いても生涯の仕事としてやっていけるような環境づくりを目標されている方です。菊地政隆氏の活動としては、年間100本を超える講演や親子コンサートを実施したり、TBS「情熱大陸」にてゲスト出演したり、静岡第一テレビ「げんきっず!!」歌のおにいさんとしてレギュラー出演した実績も持っています。 |
・小竹 めぐみ(保育士起業家) |
小竹 めぐみ氏は、保育士をする傍ら、家族の多様性を学ぶため、世界の家々を1人で旅した活動で注目を集めた起業家です。幼稚園・保育園などで勤務した後、こどもがよりよく育つための「環境づくり」を生業として、園に属さず自由に動くフリーランス保育士の肩書で活動中。現在、こどもに関わる大人向けの対話イベントを実施しており、保護者、教育関係者、社会人など、多くの方の関心を集めています。 |