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今、保育の現場で求められる「ソーシャルワーク(相談支援)」とは!?

子供と毎日接している保育士の仕事の中では、「子供の様子がなんだかおかしい」「保護者と話してみてもしっくりこない」など、原因がよくわからないまま、何か違和感を覚えるような経験したことがある人もいることでしょう。こうした状態からは、「あまり立ち入ったことまで保護者に聞けない」「子供に聞いても理由をはっきりと言わない」など、良き進展がないことも多いと思いますが、ソーシャルワーク(相談支援)によって問題を解決する方法が効果的です。今回は、人間の尊厳や社会正義などを守ることを目指して活動するソーシャルワークの意味や役割などについて、記事で詳しく取り上げることにしました。

「保育相談支援」が意味すること

ソーシャルワークを説明する前に、関連事項となる「保育相談支援」について、少し触れておきたいと思います。児童福祉法においては、「保育相談支援」の基本的な考え方にも通じる「保育に関する保護者の指導」を保育士の業務であると規定しています。具体的には、子供の保護者に対する保育の指導として、保護者が支援を求めている子育ての問題や課題に対し、保護者の気持ちを受け止めつつ、子育てに関する相談に乗ったり、問題解決のための助言をしたり、時には行動見本を示すことなどによって、保護者を支援することも必要とする考え方になります。こうした概念については、広義に「保育相談支援」と呼ばれていることが多いのですが、実際の保育相談支援に直面する問題は、通園児童の成長や子育てなどに関することに限らず、保育の専門知識や技術では解決できない深刻な問題が含まれることが多いのです。そこで、「保育相談支援」では対応が難しい問題について、ソーシャルワークで補うことが1つの方法と挙げられます。

ソーシャルワークの意味やソーシャルワーカーの役割とは?

ソーシャルワーク(相談支援)とは、社会的な問題の解決を援助するための社会福祉の実践的活動のことです。また、このソーシャルワークを行う人のことをソーシャルワーカー(社会福祉士)と呼んでいます。ソーシャルワーカーは、生活に不安を抱えている人や、社会的に疎外されている人などとの関係を構築し、相談者本人だけではなく、課題の背景や周囲にある家族、友人、その他の関連機関や環境にも働きかけることで、問題の解決に努めています。全米ソーシャルワーカー協会(翻訳:日本ソーシャルワーカー協会国際委員会)によると、下記のような役割が記載されています。

■ソーシャルワーカーの役割
① 人々の問題解決能力や対処能力等を強化するという目標を達成するため、事前評価、 診断、発見、カウンセリング、援助、代弁・能力付与等の機能を遂行する。
② 人々と資源、サービス、制度等を結びつけるという目標を達成するため、組織化、紹介、ネットワーキング等の機能を遂行する。
③ 制度の効果的かつ人道的な運営を促進するという目標を達成するため、管理、運営、スーパービジョン、関係者の調整等の機能を遂行する。
④ 社会政策を発展させ改善するという目標を達成するため、政策分析、政策提案、職員 研修、資源開発等の機能を遂行する。

参考:全米ソーシャルワーカー協会「ソーシャルワーク実務基準および業務指針」より抜粋

保育ソーシャルワーカーとは?

福祉などの大学の教授などに構成される日本保育ソーシャルワーク学会では、特別の配慮を必要とする子供と保護者に対する支援をする人材を「保育ソーシャルワーカー」と定義し、保育所、幼稚園、認定こども園など、保育施設及びその類似施設において、「保育ソーシャルワーカー」による保育ソーシャルワーク実践・支援の専門的な活動を推進しています。「保育ソーシャルワーカー」を認定・登録には、学会資格認定委員会による審査や一定の要件を満たすことが必要です。また、学会認定資格となる「保育ソーシャルワーカー」には、「初級」「中級」「上級」と3つの等級があり、等級によっても条件が異なりますが、講座受講、修了レポートの義務、学会入会などが求められます。会員の区分を確認してみると、大学院学生、学部学生、短期大学学生及び専門学校学生などの学生会員や、保育関係機関・施設が団体として入会できる機関会員などが設けられていました。今後、保育やソーシャルワークの専門性を高めていくためにも、「保育ソーシャルワーカー」の活躍は期待されていくことでしょう。

なぜ今、ソーシャルワークが求められている!?

近年、保育所においてソーシャルワークが求められる理由として、子供を取り巻く環境が多様化し、前述したような保育士の専門外となる問題が含まれることや、複雑になっていることが挙げられるでしょう。保育士は、子供の成長や子育てなどの範囲では、保育経験や知識から適切なアドバイスを贈ることが出来ます。しかし、パートナーのDV(ドメスティック・バイオレンス)、児童虐待、保護者の離婚、経済的な問題、うつ病など心の不調、養育困難などの場合、保育士が対応できることにも限界があるのです。中でも、虐待の通告は、事実や証拠などが掴みにくいため、要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)との連携や協力に関わる活動が必要となり、秘密保持義務を超えて情報の提供や交換することにも留意しなければなりません。 こういった問題は、後に刑事事件や裁判などに発展することもあり、保育士や保育所内の対処だけで何とかできる許容範囲を大きく越えていますので、関係機関や専門の福祉機関と連携して解決することが必要になってきます。保育士の立場から見れば、ソーシャルワーカーの存在は、様々な問題の解決に繋がるとても大きな力になることに違いはありません。

実際の相談支援にあがってくる保護者の声は?

保育所が受ける相談には、保育園に通う保護者だけでなく、保育所が行う子育て支援センター等でも受けていて、相談内容も実に様々です。

子供の発達に関するもの

育児に関するもの

家庭・保護者自身に関するもの

また、保護者自身が問題と感じているものだけでなく、保育士が子供の様子で気がつく、発達障害、虐待やネグレクト等の問題についても、保護者に問題を認識させるような相談支援が必要となります。切り出しにくい内容かもしれませんが、保育士に言われて初めて問題として認識した!という保護者が沢山いるのが実態です。

ソーシャルワークの知識を深めるオススメ情報♪

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サイト

書籍

まとめ
厚生労働省が開催する保育所保育指針の改定についての議論の中でも、保育の現場にソーシャルワークの導入をという意見が相次いでいるようです。保育士さんは毎日の激務の中、さらにとなると大変ですが、日々アンテナを伸ばしておき、出来る事から考え方や技術を取り入れてみるといいのかもしれません。