子どもを保育園に預けている共働きの家庭では、子どもが風邪を引いたり、感染症にかかったりすると、仕事を休まなければならないこともあるでしょう。
そんなとき、救世主になるのが「病児保育士」です。
病児保育士の名前は聞き覚えがある方もいると思いますが、保育士に比べれば知られていないので、どのような役割を担い、何を対応してくれるのか、その具体的な仕事内容までは分からない方が多いのではないでしょうか。
今回は、少人数の保育で体力的な負担が少ないことでも人気のある病児保育士について、仕事内容を詳しく取り上げます。
現役保育士や病児保育士を目指そうとしている人はもちろんのこと、子どもを保育園にいれている親御さんも知っておくと役立つ内容となりますので必見ですよ!
共働きの親御さんにとって、子どもが風邪を引いて体調不良になった時など、「この日に限っては仕事が休めない…」という状況だと、どう対処すべきか困ってしまいますよね…。
そのような状況になった時、保護者に代わって、病児のいる自宅に病児保育士が訪問して保育をしたり、病院などに併設する施設で保育したりするなど、医師や看護師と連携して子どもの看病をするのが「病児保育士」の仕事になります。
病児保育士といった名称からは、看護師の資格も持っているとか、特別な勉強をした保育士なのかと、そのようなイメージを持つかもしれません。
しかし、病児保育士は、直接医療行為を行ったりする訳ではないので看護師の資格がないとできない訳でもなく、研修で認定が下りさえすれば、働く場所によっては「保育士」の免許を持たない人でも活躍することが出来ます。
但し、病児保育士を目指すのであれば、病児の看病だけではなく、保育の知識や経験が必要となる仕事ですから、もちろん保育士や看護師の資格があるに越したことはありません。
話は変わりますが、少し前に「37.5度の涙」というドラマがありましたね。保育の業界に従事していない方が病児保育士の名前に聞き覚えがあるとしたら、もしかするとドラマが放送された影響なのかもしれません。
このドラマは、漫画家である椎名チカ氏の作品が原作となっており、病児保育士の仕事にスポットを当てた物語で、病児保育士である主人公の成長する姿が描かれていました。
ちなみに、ドラマのタイトルにある「37.5度」とは人間の体温のことで、子供が37.5℃以上の発熱がある場合に、登園停止または保護者の呼び出し対象となることに由来しています。厚生労働省のガイドラインによると、正確には「前日38℃を超える熱がでていない場合は保育可、38℃以上の発熱がある場合に保護者への連絡が望ましい」等とされていますので、ついでに覚えておくと良いでしょう。
また、病児保育士の仕事には、何が求められるのでしょうか。
まず、前提となるのは、病児の状態を注視することはもちろんですが、保育士として子どもに接していく仕事になりますので、子供が安心して病児保育士に接することができる素養がなければなりませんし、子供の健康と幸福を守るためにあらゆる世話をするのが病児保育士に求められる役割と言えるでしょう。
次に、病児保育士が活躍する場所などについて、もう少し詳しく説明していきましょう。
病児保育士の職場としては、大別すると2種類あり、各家庭に訪問する「訪問型」と保護者が子どもを連れてくる「施設型」が挙げられます。
このうち、「施設型」については、更に「医療機関併設型」「保育園併設型」「単独型」の3つのタイプに分類されますが、詳しくは下記で説明していきたいと思います。
そして、病児保育を行う方法としては、子どもの両親が就労などしており、病気で容体が急変する可能性が低い子どもを預かる「病児保育」、病気が既に治っていても通常の保育を受けることが厳しい子どもを預かる「病後児保育」、保育中の子どもが急な体調不良になった場合などで一時的に預かる「体調不良対応」、自宅での病児保育を希望する「非施設対応」があります。
病気の子どもの家に訪問して、病児保育を行います。
訪問型の就労形態は、社員として訪問先に派遣される形態と登録して依頼があった訪問先と個別に契約を結ぶ形態があります。
また、訪問病児保育については、ドラマ「37.5度の涙」がモデルにした認定NPO法人フローレンスが「訪問型」の病児保育では先駆けとなり、病児保育のニーズの増加に伴い、首都圏を中心に対応エリアを徐々に拡大して注目を集めています。
病児保育施設は、小児科などの病院に併設する「医療機関併設型」、保育所内に専用スペースを設けている「保育園併設型」、共済会などが運営母体となっている病児保育に特化した「単独型」の主に3つに分類することが出来ます。
また、こうした病児保育施設を利用する場合には、それぞれの形態にもよりますが、基本的に事前登録などが必要となり、対象となる児童の年齢や病状等の要件が市区町村の施設によって異なります。
なお、現在どのような病児保育施設があるのか、一般財団法人 全国病児保育協議会の全国病児保育協議会加盟施設一覧表もしくは、東京都福祉保育局の東京都病児・病後児保育施設一覧などで確認することが出来ます。
参考先:
■全国病児保育協議会加盟施設一覧表
■東京都福祉保育局の東京都病児・病後児保育施設一覧
共働きの人が増え、保育児童が増える中、病児保育は欠かせない存在となっており、国も補助金を出すなど整備に努めようとしています。
この表は国が補助金を出す基準で、病児保育のケースごとにまとめてあります。
病児対応型・病後児対応型 | 体調不良対応型 | 非施設型(訪問型) | |
---|---|---|---|
事業内容 | 地域の病児・病後児について、病院・保育所等に付設された専用スペース等において看護師等が一時的に保育する事業 | 保育中の体調不良時を一時的に預かるほか、保育所入所時に対する保険的な対応や地域の子育て家庭や妊産婦等に対する相談支援を実施する事業 | 地域の病児・病後児について、看護師等が保護者の自宅へ訪問し、一時的に保育する事業 ※国としては平成23年度から実施 |
対象児童 | 当面症状の急変は認められないが、病気の回復期に至っていないことから(病後児の場合は、病気の回復期であり)、集団保育が困難であり、かつ保護者の勤務等の場合により家庭で保育を行うことが困難な児童であって、市町村が必要と認めたおおむね10歳未満の児童 | 事業実施保育所に通所しており、保育中に微熱を出すなど体調不良となった児童であって、保護者が迎えに来るまでの間、緊急的な対応を必要とする児童 | 病児及び病後児 |
実施主体 | 市町村(特別区を含む)または市町村が適切と認めたもの | 市町村(特別区を含む)または保育所を経営するもの | 市町村(特別区を含む)または市町村が適切と認めたもの |
実施要件 | 看護師:利用児童およびおおむね10人につき1名以上配置 保育士:利用児童おおむね3名につき1名以上配置 病院・診療所、保育所等に付設された専門スペース又は本事業のための専門施設等 |
看護師等を常時2名以上配置(安塚ル体調不良時の人数は、看護師等1名に対して2名程度) 保育所の医務室、余裕スペース等で、衛生面に配慮されており、対象児童の安静が確保されている場所等 |
預かる病児の人数は、一定の研修を修了した看護師等、保育士、家庭的保育者のいずれか1名に対して、1名程度とすること |
交付実績 (平成24年度) |
1102か所(病児対応型561か所、病後児対応型541か所) 延べ利用児童数約49万人 |
507か所 | 1か所 |
補助率 | 3/1[国3/1都道府県3/1市町村3/1 (国3/1指定都市・・・中核市3/2)] |
病児保育士の一日のスケジュールはどのような流れなのか、一例を紹介します。
8:00 | 出勤・業務開始 当日預かる子供の確認など |
8:30 | 病児の受付手続きや検温 |
施設によっては医師による問診や症状の確認をしてもらう | |
9:00 | 病児保育開始 |
主に自由遊びですが子供の年齢や症状に合わせた室内で無理のない遊びの提供 | |
10:00 | 午前のおやつタイム |
それぞれの症状やアレルギーの有無を確認しおやつを提供します | |
11:00 | 子供達の様子を見ながら自由遊びや室内遊びに付き合います |
12:00 | 昼食 |
13:00 | お昼寝タイム |
なかなか眠れない子やぐずっている子への対応 | |
15:00 | 検温・午後のおやつタイム |
検温を済ませ、午前同様それぞれに合ったおやつを提供 | |
16:00 | 夕方は熱や症状が変わりやすいので様子を見ながら今日一日1人ひとりの様子をメモしておきます。 |
17:00 | 検温 |
17:30 | 保護者の方のお迎えや支払い手続き |
最後に保護者へ一日の子供の様子を連絡 | |
18:00 | 業務終了 |
病児保育士に資格の取得は必須ではないと言っても、病気の子どもをみるのに勉強をしていないと色々と不安になりますよね。
病児保育士が子どもの医療行為に携わることは基本的にはありませんが、子どもの服薬をサポートし、治療の不安や恐怖に対するメンタルケアは大切な役割です。
子どもの容態の変化への迅速で的確な判断と対応力が求められますので、病児保育の勉強をしている人の方が、就職には有利になります。
ここでは、保育士や看護師以外にも、病児保育士が取得しておくと有利な資格を紹介します。
主には「認定病児保育スペシャリスト」「認定病児保育専門士」「医療保育専門士」といった民間の認定資格が挙げられますが、それぞれの特徴を表にまとめました。
認定病児保育スペシャリスト | 認定病児保育専門士 | 医療保育専門士 | |
---|---|---|---|
認定場所 | 日本病児保育協会 | 全国病児保育協議会 | 日本医療保育学会 |
受験資格 |
①高校を卒業している18歳以上 ②資格取得web講座を修了 ③24時間の実習を修了 |
①国病児保育協議会加盟施設に常勤として2年以上勤務しているもの。または、非常勤として2年以上施設に勤務し、週20時間以上の実働を有する者。 ②施設長から(一社)全国病児保育協議会所定の「施設長推薦状」において、推薦を受けることのできる者 ③全国病児保育病児保育協議会が開催する「病児保育専門士認定講座」をすべて受講した者 ④その他、施設長が以上の条件と同等に値すると思われるものを推薦し、なおかつ受験資格認定委員会で承認された者 ⑤保育士、または看護師の資格を有する者 |
①日本国の保育士資格を保有すること ②病院、診療所、病児保育、病後児保育、障がい児支援施設など特定の施設で常勤1年以上、非常勤は年間150日以上2年以上の保育経験を有すること ③日本医療保育学会会員であり、1年以上の会員歴があること |
保育士資格の有無 | 保育士でなくても取得可能 | ||
資格概要 | 入院するほどではない、突発的な体調不良時に、親に代わって適切なケアと保育行う「病児保育」に関する資格。 | 病児保育の専門性を高め、さらに家庭での看護方法などの研鑽を積み、家庭での「家庭看護」へつなぐことにより、病児保育を通して究極の子育て支援を行うことのできる保育士・看護師のこと | 入院している子供の遊びや生活を支援する保育に関する資格。 |
費用 | 65,000円(税別) | 資格研修認定会費用:25,000円 認定料:10,000円 |
研修費用:30,000円 認定料:20,000円 |
進路 | 病児保育施設 訪問型病児保育 保育所 ファミリーサポート |
病児保育施設 | 小児病棟 小児病院 |