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保育士さんの給与は低い?処遇改善で給料・年収アップを目指そう!政府の新たな取り組みをご紹介!

読者の皆さんも待機児童の問題や保育士の処遇改善については、気になるニュースの1つとして注目されていることでしょう。現在、政府は、こうした保育が抱えている様々な問題を解消するため、2019年10月から幼児教育・保育の無償化をスタートさせたり、保育士の処遇を改善するための対策を講じたりする動きを見せています。しかし、共同通信社の調査によると、認可保育所や認定こども園の今年2019年4月の入所の状況は、待機児童の大半を占める0~2歳児の約1人に1人が落選していたことを明らかにしていました(2018年4月時点で待機児童が100人以上の市や町などを対象に調査)。こうした状況を見る限り、幼児教育・保育の無償化で需要が拡大することを予測すると、待機児童数が再び増える懸念が生じます。また、政府による保育士の処遇改善についても、より多くの保育士の確保・離職防止を図る目的で補助金が各保育所に支給されているものの、園の運営上の都合などで保育士の給与に反映されないところがあるのも実情です。

保育士が退職を決意する理由「給料が低い」がトップの実態

保育士の人手不足は、保育の業界及び将来において深刻な問題です。東京都福祉保健局の調査「平成30年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」によると、現在の職場への改善希望事項では「給与・賞与等の改善」(65.7%)、退職意向理由は「給料が安いこと」(68.7%)を挙げており、いずれも保育士の賃金に関する問題が挙げられていました。同調査で保育士を辞めた理由を見てみると、1位は職場の人間関係(33.5%)、2位は給料が安いこと(29.2%)3位は仕事量が多いこと(27.7%)の順位となっており、人手不足の背景には、保育士の賃金や仕事量の問題が横たわっていることが分かります。このような状況からも、保育士の給与や待遇を改善することは、人手不足や待機児童問題を解決に繋がる糸口となることは間違いありません。

現在の職場への改善希望事項(複数回答)
1位 給与・賞与等の改善…65.7%
2位 職員数の増員…50.1%
3位 事務・雑務の軽減…49.0%
4位 未消化(有給等)…36.5%
5位 休暇の改善… 320%
退職意向理由(複数回答)
1位 給料が安い…68.7%
2位 仕事量が多い…61.9%
3位 労働時間が長い…47.4%
4位 職場の人間関係…37.1%
5位 他業種への境界…27.3%
保育士を辞めた理由(複数回答)
1位 職場の人間関係…33.5%
2位 給料が安い …29.2%
3位 仕事量が多い…27.7%
4位 労働時間が長い…24.9%
5位 妊娠・出産…22.3%

出典:平成30年度東京都保育士実態調査結果(報告書)

厚生労働省の平成30年度「賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均の月収が約23万円、賞与が平均で約73万円でしたので、年収にすると推定で約352万円であることが分かりました。保育士と他の職業(全産業の平均)で月収を比較してみると、全産業の平均月収が268,300円(所定内給与額/事業規模10~99人)でしたので、保育士の平均月収である231,800円(所定内給与額/事業規模10~99人)とは36,500円もの差があることが分かります。

保育士の収入は他の職業と比べてどのくらい低いの?

厚生労働省の平成30年度「賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均の月収が約23万円、賞与が平均で約73万円でしたので、年収にすると推定で約352万円であることが分かりました。
保育士と他の職業(全産業の平均)で月収を比較してみると、全産業の平均月収が268,300円(所定内給与額/事業規模10~99人)でしたので、保育士の平均月収である231,800円(所定内給与額/事業規模10~99人)とは36,500円もの差があることが分かります。

保育士さんの賃金に関する実情
保育士の平均月収 231.8円(平均年齢 37.6歳、勤続年数8.8年)
保育士の年間賞与額 739.5円
保育士の平均年収 352.1円(@231.8×12ヶ月+賞与739.5)

出典:厚生労働省 平成30年度「賃金構造基本統計調査」
職種別第1表 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
※上記の平均月給は、企業規模計(10~99人)となります。
※上記の平均月給は、「所定内給与額」となるので、基本給に近い金額となります。
※上記の単位は千円となります。

保育士の給料が低い理由ななぜなのか?

保育園は、平成12年(2000年)までの間、保育園の設立及び運営は社会福祉法人に限られていました。その後、規制緩和によって株式会社やNPO法人が参入するようになり、民営化したことで保育園が徐々に増えていった背景があります。保育園の開業にあたっては、各自治体に届出を出すことになりますが、園児の定員、保育室の確保、園庭の広さ、園児1人あたりの保育士の数などが細かく定められており、そうした国や自治体の定める基準をクリアしなければなりません。こうした基準をクリアした保育園を認可保育園と呼び、認可保育園は自治体からの補助金が交付され、税制に関しても優遇されることになるのです。しかし、この自治体からの補助金は、本来であれば8割程度が人件費に割り当てられるべきなのですが、「委託費の弾力運用」といった制度があり、人件費を他の目的に流用されることが可能になってしまっています。株式会社が保育所を運用することになると、どうしても利益を追求するがゆえに、人件費比率の低い構造になるのも不自然なことではないのかもしれません…結果として、全てではありませんが、園によっては「委託費の弾力運用」で保育士などの人件費には割り当てられず、保育士の賃金が薄給に陥っているところがあるのも事実です。また、無認可保育園の場合には、児童福祉法で定められた認可基準を満たしていないため、基本的に補助金はありません。したがって、保護者からの保育料で運営をしなければならず、その限られた資金の中から人件費である保育士の給料を上げるのは非常に難しいのが現実です。

保育士の給与は公立と私立で違うものなの?

保育士の月給は園ごとの方針などによって大きく左右されます。特に私立と公立の賃金格差は非常に深刻な問題となっています。
私立の認可保育所は、市区町村から運営費として「委託費」が毎月支払われていますが、実際には20代の保育士の基本給にして19万円程度、そこに調整手当などが付与されるので額面で20万円程支給されているのが平均的だと言われています。ここから保険料などが差し引かれるので、手取りにすると16~17万円程度になるので、生活はかなり厳しい状況になると考えられます。一方で、公立保育園の場合は、地方公務員と同じ扱いとなるので、平均年収も500~600万円程度と、一般企業に勤めるサラリーマンの方と比較しても遜色ないといえるでしょう。公務員なので福利厚生などの待遇が充実しているほか、年功序列で給与も上がっていくような仕組みです。

保育士の賃金の決まり方や処遇改善の仕組み

保育士の賃金はどのようにして決めらており、政府が取り組む処遇改善とは何を進めているのでしょうか。ここでは、賃金の構造や処遇改善について、それぞれ詳しく説明していきましょう。

公定価格と保育士の賃金について

公定価格とは、経済統制の必要上、国家が一定の品目につき価格を決定することになります。ここでは認可保育所の場合で説明しますが、まず「基本部分」となる子供1人あたりの保育単価(子供の年齢、地域区分、保育士の人件費等から算出)と、「加算部分(休日保育、夜間保育、障害児の受け入れ)」を積算して、国が運営費を定めていきます。
そして、各保育所等の運営費の「基本部分」を保育単価と利用する子どもの人数を掛け合わせて計算し、運営費から保育料を引いた残りが委託費と認められ、その委託費が市町村から保育所に支払われる仕組みです。保育所は、委託費を受け取った後、保育士への給料、土地の賃借料、給食の食材費、光熱水費などを支払います。つまり、この委託費を原資として、保育士の人件費を支払うことになるのです。この際、認可保育所は、基本的には保育士の配置基準や運営費等が国によって決められるため、保育士の給料を大幅に上げるような余地が殆どないのが現状です。

処遇改善等加算について

より多くの保育士に活躍してもらうため、政府は平成25年に保育士の給料アップのための補助金を支給する制度「処遇改善等加算」を創設しました。主には、保育士の勤続·経験年数に応じた賃金改善や、保育士のキャリアアップを積極的に取り組んだ保育園に対して補助金を支給する制度です。下記の「処遇改善等加算Ⅰ」の仕組みにまとめてありますので、詳細についてはそちらをご確認ください。
これにより、保育園は支給された補助金で、保育士の給料を上げたり、「処遇改善手当」として毎月の給与に上乗せしたりすることができるようになりました。この補助金による給料アップの対象は施設長や園長だけでなく、パートや派遣社員の方にも適用されます。

「処遇改善等加算Ⅰ」の仕組み
➀基礎分 職員1人当たり平均経験年数に応じて、2~12%加算率を設定。
※加算額は、適切に昇給等に充てることを前提とし、当該施設内のみ充当可。
➁賃金改善要件分 賃金改善計画・実績報告が必要。「基準年度の賃金水準を適用した場合の賃金総額」及び「人件費の改定状況を踏まえた
部分」に対し、5%の賃金改善を行うことが要件。
※平均勤続年数11年以上の施設は6%。
※加算額については、確実に職員の賃金改善に充てること。法人内の他の施設への充当も可とする。
➂キャリアパス要件分(②の内数) 役職や職務内容等に応じた勤務条件・賃金体系の設定、資質向上の具体的な計画策定及び計画に沿った研修の実施又は研修機会の確保、職員への周知等が要件(満たさない場合、②から2%減)。

新たに加わった技能・経験に応じた処遇改善等加算について

そして、これまでの取り組みに加えて、厚生労働省が540億円の予算を計上し、平成29年度から「処遇改善等加算Ⅱ」という新制度が生まれました。この制度は、新しい役職に昇格することで月に最大4万円の給料アップを目指せるというものです。以前までの制度であれば、保育士のキャリアアップは「保育士」「主任保育士」「園長」の3つしかありませんでしたが、新制度では「職務分野別リーダー」「副主任保育士」「専門リーダー」という3つの役職が新たに追加され、キャリアアップの選択肢が広がりました。

副主任保育士

管理職として、主任保育士と現場をつなぐ役割を担います。7年以上の経験があり、職務分野別リーダーを経験すると、所定の研修(マネジメント、3つ以上の研修分野を修了)をし、副主任保育士として発令されることが条件となっています。

専門リーダー

専門性の高いリーダーとして職場のスタッフを支える役割を担います。こちらも7年以上の経験があり、職務分野別リーダーを経験後、所定の研修(4つ以上)を修了し、専門リーダーとして発令されることが条件となっています。

職務分野別リーダー

キャリアアップの最初のステップです。3年以上の経験がある保育士が対象で専門分野のリーダーとして働きます。担当する分野は6つの研修分野から選びます。

職務分野別リーダーになるには、都道府県単位で行われる研修を受けて、研修修了後に職務分野別リーダーの発令を受けることが条件となっています。研修は15時間(約2~3日)となっており、園長と主任保育士を除いた職員数が5分の1と決まりがあります。手当額は月額5,000円です。

保育士の処遇改善の推移

平成25年の「処遇改善等加算」の導入から現在までの過去7年間の推移を確認してみると、処遇改善は平成25年で約3%(月額約9,000円)であったものが、平成31年・令和元年では約13%(月額約41,000円)まで増加したことがわかります。そして、今年の処遇改善のトピックとしては、保育士の収入面においては大きな恩恵は受けませんが、10月増税の財源を活用した新しい経済政策パッケージが挙げられるでしょう。なお、平成25年度から現在までの保育士等の処遇改善の推移については、図表1も併せてご確認ください。

新たな役職を目指せる「キャリアアップ研修」とは?

厚生労働省が示した保育士等キャリアアップ研修の分野及び内容によると、研修分野は大きく分かれて8つに分かれています。

副主任保育士と専門リーダーはそれぞれ、この中から要件を満たすものを受講しなければいけません。4つの分野の受講が必要なので、1つの分野につき15時間以上の研修を4分野受講すると合計60時間以上の受講になります。勤務しながら受講するというのは負担が大きい部分もありますが、専門知識をより深く身に付けることができます。また修了証は他の都道府県でも効力を有するので、転職や転勤の際にもキャリアアップ研修を受講したことは大きなアピールポイントになります。

【キャリアップ研修の対象者】
保育士キャリアアップ研修は正社員だけでなく、条件を満たしていれば施設で働く職員全員が受講対象者となります。その為、正社員以外にも契約社員やパートタイムの方も対象となります。(受講者は施設が決める為、希望しても受講できない可能性があります)

※注意点※
◎受講対象外の方
保育施設に併設している園長保育事業施設や学童などに勤務する職員は対象外となる

処遇改善で受け取れる支給額は保育園によって異なる?

ここまで紹介してきた処遇改善の手当ですが、「そんなにもらったことない」「そもそも研修の話を聞いたことない」と思う方も少なくないでしょう。保育士の給料を上げるための補助金は国から保育園に支給されています。保育園側は支給されたお金をどの職員にどれだけ支給するかは各保育園に任されています。したがって、給料に上乗せするのか、ボーナスや一時金として支給するのか等の方法は保育園によって異なることを知っておきましょう。特に、前述した「委託費の弾力運用」のおける保育者人件費比率については、保育士の賃金アップには大きなが課題が残っていますが、国会でも問題視する声が上がっています。今後、保育園は補助金の分配方法や対象者について、きちんと保育士に説明することが期待されています。

さまざまな処遇改善への取り組みをご紹介

保育士の処遇改善は、自治体ごとに独自の取り組みを行っている地域があります。

東京都

独自に4.4万円の給与上乗せや、複数の区借上げ宿舎の家賃補助制度、キャリアアップ補助金などを導入しています。

【中央区】
宿舎1戸あたり月額の7/8を助成
【文京区】
保育士等キャリアアップ補助
【江戸川区】
育児休業給付金の給付期間を最大6か月まで延長

千葉県

【松戸市】
保育士になる為の就学し資金援助、新卒保育士向けに家賃補助制度·就職準備金の貸付制度、給料上乗せ支給を実施。手厚い支援内容は「松戸手当」と呼ばれ話題になっています。
【船橋市】
家賃補助制度、就学資金貸付制度、月額給与と期末手当を上乗せ。

神奈川県

【横浜市】
横浜市独自の助成である「職員処遇改善費」を制度化し導入
【川崎市】
保育士等キャリアアップ研修

この様に地域や自治体が独自の補助金制度を取り入れるケースが増加しています。
保育士として快適に長く働くには、処遇改善に積極的に取り組んでいる自治体や保育園を見つけることが大切です。

まとめ
いかがでしたでしょうか?これから保育士を目指す人も、現役で活躍されている保育士さんもやりがいをもって働けるような環境が整うことを望んでいるはずです。働く職場で満足のいく仕事ができるように、処遇改善に積極的な自治体や保育園の取り組みなどをしっかりと調べておくことが大切です。より待遇の良い保育園へ転職を考えているけど「調べてもよくわからない」という場合は、ほいくジョブまでぜひお問い合わせください。専門のコンサルタントが丁寧に対応させていただきます。