「保育士」と聞くと、一般的に保育園で働いているイメージが強いと思いますが、実はそれ以外にも保育士が活躍している職場は多くあります。その中のひとつに児童養護施設があります。
この児童養護施設や障害児施設などの児童福祉施設で働く保育士を“施設保育士”と呼んでいます。そこでは“児童指導員”として児童たち(18歳未満)の両親に代わって育成・指導・サポートを行っています。
保育業界は給料の低さが問題視されていますが、はたして児童指導員の給料はどのくらいなのか等給料事情をメインに児童指導員としてのキャリアや仕事内容などについてご紹介したいと思います。
児童養護施設で働く児童指導員の平均年収はどれくらいかご存知でしょうか?実は同じ児童指導員でも公立か私立(民間)かによって給料に幅があります。そのことを含めて下表をご覧ください。
児童指導員の平均給料 | |
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平均年収 | 約440万円 |
平均月給 | 約27万5千円 |
最大平均年収 | 約1,000万円以上 |
公立施設の平均年収 | 約728万円 |
私立(民間)施設の平均年収 | 約323万円 |
※出典:国税庁の民間給与実態統計調査 厚生労働省の賃金構造基本統計調査 公務員データ統計調べより
このように公立の児童養護施設で勤務する児童指導員は地方公務員となるため、公務員給与規定に基づいて支給されるので勤続年数による昇給や、ボーナスが民間よりも高い傾向にあります。
反対に私立(民間)の児童養護施設で働く児童指導員の場合は、勤務先によって給料が異なります。当直手当などで高水準の給料となる職場もあれば、私立の保育園で働く保育士さんさほど変わらない職場もあります。そのため、保育園と児童養護施設で働く職員の平均年収を比較するとさほど変わらないのが現状です。
つぎに、児童指導員の年齢別による平均年収推移を見てみましょう。
年齢 | 年収 | 月給 | ボーナス |
20〜24歳 | 353.3万円 | 22.1万円 | 88.3万円 |
25〜29歳 | 280.0万円〜330.0万円 | 20.6万円 | 82.5万円 |
30〜34歳 | 278.4万円〜378.4万円 | 23.7万円 | 94.6万円 |
35〜39歳 | 287.6万円〜391.6万円 | 24.5万円 | 97.9万円 |
40〜44歳 | 319.0万円〜440.0万円 | 27.5万円 | 110.0万円 |
45〜49歳 | 370.8万円〜492.8万円 | 30.8万円 | 123.2万円 |
50〜54歳 | 418.0万円〜528.0万円 | 33.0万円 | 132.0万円 |
55〜59歳 | 413.6万円〜523.6万円 | 32.7万円 | 130.9万円 |
60〜65歳 | 256.4万円〜523.6万円 | 22.3万円 | 89.1万円 |
このグラフから、児童指導員として年収が最大となる時期は50代前半となっています。児童指導員はあまり役職などを設けている職場が少なく、一般の職種と比べて昇給の機会も少ないことがわかります。しかし、保育園などの保育施設と比べると、ボーナスや福利厚生はしっかりした施設は多いようです。
では、児童指導員の生涯賃金はいくらほどになるのでしょうか。
児童指導員の生涯賃金 | 推定1億8,920万円 |
日本の生涯賃金 | 推定2億5,317万円 |
この生涯賃金を上げるには民間の施設で勤務する児童指導員の平均年収をアップさせることが鍵となりますが、年収1000万円以上を稼ぐのは現実的に難しいとされています。統計として公務員で45歳前後で部長クラスの役職に就くことができれば年収1000万円以上の高給取りになることも不可能なことではないのですが、前述のとおり児童指導員には役職を設けている職場はあまりなく、公立の児童養護施設では部長クラスまで昇格できる人は限られてくるため可能性は低いでしょう。
職場別の公務員児童指導員の平均初任給 | |
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児童養護施設 | 約17万円 |
児童相談所 | 約16万円 |
乳児院 | 約16万円 |
児童家庭支援センター | 約16万円 |
医療型児童発達支援センター | 約17万円 |
上記が公立の施設別における児童指導員の平均初任給になります。
地方公務員の初任給の平均は大学卒17万3201円・短大卒15万3438円・高校卒14万0277円となっていることから、公立の施設で働く児童指導員の平均初任給は一般的といえます。
それでは児童指導員の活躍が多くみられる児童養護施設と児童相談所の平均年収の相場はどのくらいなのでしょうか。パートなど非常勤で働く児童指導員の時給相場についてもご紹介します。
児童養護施設とは、病気や経済的な理由によって親元を離れた児童や虐待を受けている児童など、養護を必要とする児童の育成や、退所した児童の相談や自立のための援助を行うことを目的とした「児童福祉法41条に定められている児童福祉施設」の一つです。
現在、児童養護施設は全国に603か所あります(平成28年10月「厚生労働省 家庭福祉課調べ」より)。また、この児童養護施設で勤務する児童指導員の平均年収は340万円~800万円となっています。
児童相談所はすべての都道府県・政令指定都市に最低1か所以上設置されており、主に養護相談・保健相談・心身障害相談・非行相談・育成相談の5つの対応を行う施設です。「児童福祉法第12条に基づき各都道府県に設けられた児童福祉の専門機関」の一つです。児童相談所には行政職員、精神衛生専門の医師、児童心理司、児童指導員等、さまざまな分野に精通した専門の職員が働いています。児童相談所は全国に212か所あり、一時保護所も合わせると349か所あります(平成30年10月1日 厚生労働省ホームページ「全国児童相談所一覧」より)。この児童相談所で勤務する児童指導員の平均年収は280万円~670万円となっています。
最近は保育業界に限らず児童指導員の業界も人手不足で、無資格者であってもパートとして採用する施設が増えています。非常勤の児童指導員の給料は施設によって差はありますが、時給1,200円程度が相場であり平均年収250万円~という職場が多い傾向にあります。
ここで児童指導員の仕事内容についてもご紹介します。児童指導員は以下のような施設で活躍しています。
児童指導員は、施設で生活をしている子どもたち一人ひとりに対して、日々の勉強の手伝いから生活面に至るまで教育指導などを行い、子どもたちが心身ともに健やかに成長するためのサポートを行っています。
保育園で働く保育士さんとの大きな違いは、子どもの入所年齢に差があることや、休みの日でも事故やケガ、病気などのトラブルがあれば昼夜を問わず駆けつけることもあるため、「断続勤務制」を採用している施設があることです。
各施設の運営方針や規模、職員と子どもの数のバランスなどによっても、一人の児童指導員が担当する業務の量や範囲は異なりますが、子どもの療育・送迎・掃除、月間の予定・個別支援計画作成・個別記録などのも児童指導員の仕事は多岐にわたります。その中で最も重要な仕事は、様々な理由で両親と離れ離れになったり、虐待を受けてしまった心のケアを必要とする子どものために、「家」「保護者」の役割を担うところにあります。
詳しい仕事内容については働く施設によってさまざまですが、児童福祉施設の場合だと、0~18歳までの子どもたちと一緒に施設で寝起きして、生活を共にしながら支援にあたります。朝は顔を洗うことから食事の世話を行ったり、学校の宿題を手伝ったりします。時には心身の成長にも繋がるレクリエーションやスポーツなどを企画して日々の生活を楽しんでもらいながら心のケアや集団生活のルールなど教えていきます。
一方で児童相談所の児童指導員は、両親の養育困難な状態(家出・死亡・離婚・入院など)や養育者からの虐待などの養護相談、学校でのイジメ・不登校・非行問題などのさまざまな相談に応じたり、家庭訪問を行っています。また、施設に入所した児童が家庭復帰できるような支援や、里親(養育家庭)の家へ訪問して最近の児童の様子をみたり、里親と近況について面談などを行っています。
児童指導員になるためには、まずは“児童指導員の任用資格”を取得しなければなりません。
児童指導員の任用資格の取得には、一般的には厚生労働大臣指定した4年制大学・短大通信制大学の教育学部や心理学部などで指定された科目を学び、単位修得して卒業することで任用資格を満たすことができます。
この他にも…
などの児童指導員の任用資格の取得方法があります。
しかし実際に児童指導員として働くには、児童指導員の任用資格を取得後に、公立の施設で働く場合は公務員試験、私立(民間)の施設で働く場合は各施設の採用試験に合格しなければなりません。