保育園には私立と公立の2種類がありますが、待遇面や働き方などに違いがあります。それぞれの特徴や良さなどを知っておくことで、就職先を選ぶ上での大きな判断軸にもなりますね。
当コラムでは、私立と公立の特徴、気になるお給料の差、働き方の違いや将来性などをご紹介します。
公立保育園は、市区町村といった自治体が運営を行っています。短期雇用以外の先生は、地方公務員として市区町村に雇用されるので、待遇も地方公務員に準じたものになります。公立園間で差が出ないよう各自治体で決められた保育計画に沿って運営をしているので、園ごとの保育スタイルの違いが比較的少ないといえます。近年では公立保育園の民営化の波が押し寄せており、園も減少傾向にあります。サービスの充実や保育園の多様化などのメリットがありますが、保育士の負担増加などのデメリットもあります。将来的にはすべての保育所を民営化することを多数の自治体が公表しているため、公立保育園での就職を考えている人は将来性についても考える必要がありますね。
一方、私立保育園では、学校法人やNPO法人、保育事業を展開する民間企業が運営を行っており、保育士は運営団体に雇用されるので、待遇は運営団体の基準によって異なります。保育指針は各私立保育園が決定するため、実施している保育内容にも、音楽や英語に力を入れている園や運動や美術の教育に特化している園など、それぞれの園ごとに個性があります。
公立の保育園で働くには、地方自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。筆記試験は保育についての専用知識の他、高校卒業レベルの数学や文章理解などの一般教養問題があるので、幅広い知識が求められます。さらに、二次試験移行は面接や作文、ピアノなどの実技試験があることが多いようです。倍率が数十倍になるケースもあり、合格しても必ずしもすぐに勤務できるわけではないので(施設から採用のオファーを待つことになります)、公立保育園で働くことは、私立よりも狭き門といえますね。
公立保育園は、私立保育園と比べて給与や待遇が良い、安定している、といったイメージが強いようですね。ここでは、私立・公立それぞれの保育士のお給料を比較してみました。
公立保育園 | 私立保育園 | |
平均給料月額 | 34.7万円 | 22.2万円 |
平均ボーナス額 | 138.6万円 | 66.2万円 |
平均年収額 | 555.9万円 | 333.7万円 |
平均年齢 | 40歳 | 35歳 |
ほいくジョブ調べ
このように比較してみると、年間でおよそ200万円の差があります。難関である公立保育園ですが、給与面ではかなりの高水準であることがわかります。公立保育園は、定期昇給があるので、その差が年収額に表れているといえます。一方、私立保育園の平均給与額はおよそ22万円と公立保育園と比べて明らかに低いことがわかります。これは、私立保育園は離職率が高く長く勤務する人が少ないことを表しています。
このように、私立保育園と比べると公立保育園のほうが給与額が高めであることがわかります。
公立保育園のメリットはやはり地方公務員としての安定性です。公務員と同等の福利厚生があるので、厚生年金や社会保険の加入はもちろん、産休・育休の取得も保証されています。
一方、私立保育園は運営団体による独自のシステムなため一概には言えませんが、経営状況の良い保育園などでは、公立保育園よりも良い待遇が期待できる場合もあります。
しかし公立・私立にかかわらずお休みが取りにくい問題は保育士業界の大きな問題となっています。近年では、社会保険制度の加入や育休復帰率100%の園が出てきており、労働環境の改善にむけて努力している園も増えているようです。
先にも少しお話しましたが、公務員行政の支出削減などの理由により、公立保育園を民営化するという動きが広まっていることから、将来的には公務員保育士が存在しなくなってしまうということになります。
民営化のメリットとしてサービスの充実や保育園の多様化が挙げられますが、長く安定して働けると思って公務員保育士を選んだ人にとっては大きな問題ですね。今後は公務員保育士が増えたり、待遇が良くなる可能性は低いといっていいでしょう。
では、実際に勤務している保育園が民営化された場合、そこで働いている保育士さんはどうなるのでしょうか。多くの場合はまだ残っている公立保育園に異動になります。しかし、急激な民営化で公立保育園が減少傾向にあるため、結果的に次の職場を用意できないという問題があります。
これらの問題も踏まえて保育士を目指す人は、公立・私立にこだわらず、自分らしく働ける保育園を探すとよいですね。
公立保育園では、公務員なので数年に一度は必ず異動があります。ほとんどの場合は3~6年で移動になる場合が多いようです。一つの職場にとどまれず、移動後に新たに人間関係を築く必要があるので、新しい環境にすぐに適応できるひとがよいでしょう。
市区町村による採用は保育園の先生ではなく保育士資格者の採用なので、職場は必ずしも保育園とは限らないのです。児童センターや子育て支援センター、または役所の保育課の窓口として配属されることもあります。
また、公立の保育園は減少傾向にあるため、自分の働いている自治体に公立の保育園がなくなった場合は、保育以外の職種の公務員で働くことになります。
このように、公務員保育士は様々な働き方が求められます。
公務員の保育士になるためには、倍率の高い公務員試験に合格する必要があります。
試験内容は国語、数学・・・などといった高校レベルの問題が出題されます。
このように保育には関係のない科目を勉強することに時間をかけることになるので、あまり勉強が得意ではない方には厳しい道のりになってしまう可能性があります。逆にこういった科目の勉強が得意な方であれば公立保育園も選択の一つになりそうですね。
自分にカラーを出しにくい公立保育園に対し、私立保育園ではリトミックや英語、美術や体育教育など、独自のカリキュラムを取り入れた保育など、保育方針が園によって大きくことなり、いろいろな“個性”があります。ピアノを使って音楽をたくさん取り入れたい!外遊びをいっぱいして身体をたくさん動かしたい!などといった、自分の保育観を持っている人には、公立保育園では物足りなく感じる場合もあるようです。私立保育園では自分の得意分野を活かして保育を行うことができるメリットがあります。
私立保育園では公立保育園とちがって異動はほとんどありません。そのため入園時に0歳だった園児を卒園まで成長を見届けることができるのも魅力の一つです。また、職員同士とも一度打ち解ければ、チームワークを発揮して一丸となって保育を行うことができます。
人間関係が原因で転職を考えている人も多いのではないのでしょうか。すぐに転職したい!そのような時、公立保育園だと試験勉強に時間を割く必要がありますし、試験の時期も限られています。私立保育園では、公務員保育士試験を受ける必要はなく、「この園で働きたい」と思った時に、すぐに応募することができるというメリットがあります。職場を変えるだけで環境が大きく変わるケースが多いようですね。
私立保育園では、若いうちから責任あるポジションを任されることが多いため、主任やリーダー職を若いうちから経験したい人にとっては最適な環境といえますね。逆に、公立保育園では勤続年数の長い保育士さんが多いため、経験の浅いうちに責任あるポジションに就くことは難しい環境のようです。
このように、公立保育園と私立保育園の違いを比較してみると、それぞれにメリット・デメリットがあることがわかります。給与や待遇面が良い公立保育園でも、良いところばかりではなく、将来的にはなくなってしまうリスクも考えなければいけません。また、待遇面などにおいて悪いイメージが先行しがちな私立保育園ですが、独自の保育方針などで魅力を増してきていますし、労働環境においても改善してきている傾向にあります。公立・私立にとらわれず、保育士としてどのように働きたいか、何を求めているかを明確にして、自分にあった働き方を見つけていく事が大切ですね。