保育園ではたくさんの子供がいるため、指しゃぶりや爪かみ、またはトラブルを引き起こすかみつきやひっかきなどをしてしまう癖のある子も中にはいますね。
保育士さんはそんな子供達の対応や指導もしなければならないため、子供の癖についてよく知りどのように導き、何に注意したら良いのかを頭にいれておくことが大事です。
今回はそのような子供の癖の対応や指導について役立つ情報を紹介します。
指しゃぶりや爪かみ、かみつき・ひっかきなど何度言い聞かせても治らない癖!対応するほうも困ってしまいますね。
これらの癖ですが実は成長するにあたり必要な過程であったり、まだ気持ちを言葉で表せない子供の心のサインだったりするのです。
困った癖だと直そうとするのではなくどのような時にその癖をやるのか、はじまったのはいつ頃でその頃に何があったのかを考えてその癖から子供の気持ちや心を理解してあげましょう。
乳児期の指しゃぶりは認知行動といって、口から外界の刺激を認識し手や目の発達にも繋がる重要な行動です。
月齢による認知行動
0歳児の赤ちゃんは口の感覚が一番発達しているため物を口でなめて確かめ、それにより様々な機能が発達していきます。
【生後3ヶ月頃】
一番身近にある指や手を口にいれたり、なめたり吸ったりすることで感覚の刺激の発達がうながされます。
【生後4ヶ月頃】
まわりにあるものをつかんで舐めることが増えます。
いつもしゃぶっている指と物がちがうと感じることで、指が自分の体の一部であり物が体の一部でないことを認識します。
【生後5~6ヶ月頃】
手や足が発達してきて、目でみたものをつかんで口にいれたり舐めたりが活発になり、指を使っておもちゃで遊ぼうとします。
【生後7ヶ月~】
ハイハイして動き回るようになるので手を口にいれたりする回数が少しずつ減っていきます。
※このように指しゃぶりは発達における重要な役割があるので、指しゃぶりを困った癖として認識せず、子供の探索活動としてとらえ保育士さんやお母さんもそれを理解し無理にやめさせるようなことはしないようにしましょう。
1~2歳頃になると、手や指そして言葉で表現しようとする力が育ってきますので、指しゃぶりばかりしていて手指をつかった作業に手が出ないことのないよう、少しずつ指しゃぶりを減らしていくと良いでしょう。
指しゃぶりは無理にやめさせると子供への負担やストレスが大きくなってしまうので3~4歳までにやめられるようにじょうずに減らしていきます。
<対応のポイント>
子供がどんな時に指しゃぶりをするのかを観察し理解することで対応の仕方を考えます。
寝る前にどうしても指をしゃぶってしまう時は、寝てからそっと指を口からはずししばらく手をつないであげます。
まわりの状況をうかがって指をしゃぶって見ている子には遊びの仕方を教えてあげ一緒に手を使いおもちゃで遊ぶことで自然と口から指しゃぶりがはずれます。
一緒に手遊びをするのも良いですね。
他にも声をかけてお話をすることで指しゃぶりをやめて、話に意識が移ることもあります。
その繰り返しと積み重ねで少しずつ指をしゃぶらないでも良い方向に導いていきます。
きっかけをつくる
誕生日などをきっかけに、大きくなったから指しゃぶりも卒業してみる?などと声をかけて自信を持たせたり、指しゃぶりをすると歯並びが悪くなってしまうことを説明したりして子供が自分でやめようと思うようにきっかけをつくってあげましょう。
また指にタコができたりしたら指しゃぶりしてたからできちゃったんだね!痛くなっちゃうといけないからばんそうこう貼っておこうか!とばんそうこうをはるとしゃぶっても指の感覚と違うのでやめられることもあります。
※気にしすぎない
自分の子となると色々心配になってしまうのが親ですが、愛情が足りないとか何かストレスがあるのかもとか気にしすぎて神経質になると子供にも伝わってしまい、余計にするようになってしまうこともあるので注意が必要です。
保育園で子供の指しゃぶりをなくそうとする際には保育士さんと保護者で神経質にならないように焦らずゆっくりした気持ちで互いに協力してやっていくことが大切です。
子供のかみつく、ひっかくなどの行動は自分の要求をまだ言葉で表せないため、本能的にそのような行動で感情を表現してしまうのです。
【かみつき・ひっかきが起こる原因】
先に、かみつきやひっかきはまだ言葉でうまくいえないために行動にでてしまうと説明しましたが、実際にどんな時にそのような行動にでてしまうのでしょうか!?
このように感情をどう表現したら良いのかわからない時に起こることが多いですね。
かみつきやひっかきは困った癖だと思ってしまうかもしれませんが、自分の気持ちの表現や自己主張をするという発達の1つだと思って対応すると良いでしょう。
かみつく・ひっかく行動をしてしまった子は自分の気持ちを表現しただけで、それが悪いことだと思っていません。
そのため、かみついてしまったりひっかいてしまったりした時には、それが悪いことだとしっかり教えることが大切です。
<対応のポイント>
かみつかれた・ひっかかれた子への対応
まずはやられてしまった子の手当てを優先し、血がでていたら流水できれいにして止血し腫れていたら冷やしましょう。
子供の気持ちに共感し「痛かったね」「先生とめられなくてごめんね」と優しく声をかけ落ち着かせてあげます。
かみついてしまった・ひっかいてしまった子への指導
かみついたりひっかいたりしたことが悪いことであると教え、厳しく叱ります。
どうしてやってしまったのかを子供に聞いてもまだうまく答えられないので、保育士さんのほうで状況をみて「~したかったの?」「~が嫌だったの?」と言葉にしてあげて原因を一緒に考えます。
そしてやられてしまった子が痛い思いをしていることを伝え、保育士さんがその子に謝る様子をみせます。
このように対応することで先生は自分の気持ちをわかってくれる・わかろうとしてくれるという信頼感がめばえ、先生が謝る様子を見て大好きな先生を困らせてしまっていることから悪いことをしたんだなと気付くこともあります。
保護者への対応
噛まれた子の保護者には、その時の状況や様子を伝えかみつきやひっかきを防げなかったことを謝ります。
またこれからどのように防ぐかなどの対策もきちんと考え伝えましょう。
噛んだ子の保護者へは園の方針で伝えないところもあるようですが、子供のありのままの姿を知ってもらうためにも、噛まれた子の保護者と同じように状況と様子を伝え噛んでしまったことと、子供がどんな気持ちでやってしまったのかなども伝えられると良いですね。
そして保育中にもかかわらずそれを止められなかったことを謝りましょう。
※トラブルを未然に防ぐ対応策
爪を噛む癖は心理的なものからくるとされていましたが、最近では子供が発達する過程での生理的な行動であるとも考えられています。
爪を噛み始める時期が3歳くらいから始まることを考えると自我が形成されて徐々にまわりが少しずつ見えてきて、はずかしさや友達との関わりを考えだしたり、やっていいこといけないことの区別がつくようになり我慢することを覚えたりできるようになる時期ですね。
そして小学校4年生~6年生に爪を噛む子が最も多くなり、そこからまた減っていく傾向にあることから、日常的な環境の変化やストレスに耐性ができてきた頃に落ち着いてくると考えても良いかもしれませんね。
一般的に爪を噛む原因とされているものはどんなものなのでしょうか?
よくあげられる原因を知ることで解決の方法を導き出しましょう。
<爪を噛む原因>
どれも不安やストレス、そしてそれをきっかけとしたものであることがわかると思います。
<対応のポイント>
【親の愛情不足】
妹や弟が生まれてあまりかまってあげられなくなったり仕事が忙しくかまってあげられないことが多くなったりしていることに心あたりがある場合は下の子のおっぱいをあげている時にも上の子とお話をしたり見てあげたりを心がけ、仕事が忙しい親は、少しの合間でもかまってあげたり爪を噛んでいることを指摘するのではなく爪を噛んでいる時に何か一緒にできる遊びをすると良いですね。
【環境の変化・日常的なストレス】
幼稚園や保育園、小学校に通っていると遊びが変わったりクラスが変わったり日常的なことでも毎日同じではないので、そのような変化からストレスを感じることもあります。
次の日に何をするのかというだけでも不安に思う子はいます。
そのような場合はたくさん話を聞いてあげたりしてあげると良いですね。
【厳しすぎるしつけ】
叱ることが多いと子供の思い通りにならないことばかりになってしまいストレスや苛立ちが増えてしまいます。
ああしないとダメ!こうしないとダメ!など何かにつけて叱ってしまうなど一日に笑顔より叱ることが多くなっていないかを振り返り、保育者のほうで見直してみると良いですね。
これらをきっかけに癖づいてしまって続いてしまう傾向もとても多いようですが、先に紹介したことで思いあたることがなければ、あとは生理的なものであるかもしれないので、神経質になり無理にやめさせようとせずに気にしないようにすることも大切です。
結局は爪を噛む癖の子供を指導するのではなく、その子供をとりまくストレス環境をとりのぞいてあげるという配慮から入ることになりますね。
爪を噛んでいるところをみつけても叱るのではなく、そばに寄り「こんなに噛んだら指が痛くなっちゃうよ」とやさしく手を握ってあげることを繰り返すと良いかもしれませんね。
一歳をすぎた頃から自我がめばえてきて自分が誰なのか、どれが自分のものなのか、ああしたい!こうしたい!というような意志がうまれると自己主張がはじまります。
また、所有するということも認識してくるので自分のものや自分の場所をとられると怒るようにもなります。
そのため一歳半を過ぎたあたりから物の取り合いが多くなるのは、子供同士の自我と自我のぶつかりあいが生じるためでありごく自然な現象です。
この友達とのぶつかりあいで、自分と友達の考え方の違いや気持ちの違いに気がつき、後々の社会性に繋がっていきます。
<子供の所有権の認識とは?>
子供の所有権の認識と大人が考える所有権の認識は違います。
大人が考える所有権は保育園のおもちゃはみんなのもの!というものですが子供にはまだそれがわかりません。
まずは子供の所有権の認識について理解し子供の気持ちをわかってあげることが大切です。
などという認識になっているため床においてあったおもちゃを他の子が使おうとしているのをみて、取り合いやけんかに発展してしまうことが多くあります。
<対応のポイント>
近くで見守る
物の取り合いやトラブルは成長のためには大事なことですが、子供同士のぶつかりあいになると、かみつきやひっかきに発展することもあるので近くで見守りそれを防ぎます。
その場だけの解決をしない!
取り合いになると、「○○くんが使っていたから貸してってちゃんと言おうね」や「順番だから次に貸してあげてね」などといってその場をおさめるのは一見正しいように思いますが、子供は貸してと言われたらその遊びをもうやめなくてはならないという認識になってしまいます。
この時期の子供にとって好きなものやこだわり執着は自我の発達のあかしなので子供自身の判断を尊重し、すぐに保育士さんが介入するのではなく子供たちがどうするのか様子をみましょう。
お互いの気持ちを聞く
取り合いになった時は必ず二人とも平等に気持ちを考えて代弁してあげましょう。
「このおもちゃが使いたかったのかな?」「○○ちゃんが先に使っていたのかな?」と状況から推測して聞いて、まだ子供たち自身でうまく言葉で表せなくて解決できないときは「○○ちゃんが先に使っていたから遊び終わるまで待てるかな?」「遊び終わったら教えてくれるかな?」と提案して子供達に判断させ、納得して自分たちで判断したことを認めてあげましょう。
※おもちゃは今使っている・遊んでいる子のものというルールを少しずつ教えていくと良いですね。
使いたくてけんかになったおもちゃを先に使っている子がどのように楽しく遊んでいるかを見せたりすることで相手を尊重することを学び、とられても返してといったら返してくれたということから自分の主張が受け入れてもらえたといううれしさを知ったりしながら次第に物の取り合いは減っていきます。
困った癖!困ったトラブルと思いがちなことにも、発達との深い関わりがあったり成長するにあたって必要なものであったりすることがわかりましたね。
そんな癖やトラブルから子供の心のサインや気持ちをしっかり受け止め理解し認めてあげられる指導ができると子供たちも毎日安心して楽しく通園できることでしょう。